この漫画のテーマを一言で言えば“世代間格差”となるだろう。作品のなかで印象的なのは、多数の「高齢者」を若い世代である主人公(=ハローワーカー)が大量虐殺する描写だ。じつはYは、ブログのなかでも、この大量虐殺を暗示するようなエントリーを残していた。
15年2月2日のエントリーで、秋葉原連続殺傷事件で死刑が確定した加藤智大死刑囚に触れ、こう書いている。
〈無双まとめ/1m~1.5mの短い槍状が最も有効か・・・入手、自作し易く安価/即席ならパイプにナイフをガムテープ等で固定/持ち手側は傘の柄のように突きにも引きにも力を入れやすい形状だと/扱いやすく奪われにくい/原始的で低能な犯罪にみられるが・・・/階段などの狭い空間、高低差を利用するなど場所、時間、/使い手によっては銃の乱射や爆弾テロより正確で被害も大きい〉
〈大きな音を発さないので避難が遅れる/ウイグルのように複数人で計画的に無双すると大人災になる〉(15年2月2日のエントリー・「無双」より)
この「無双まとめ」という表現は、おそらく、単体のプレーヤーキャラクターを操作して数百人の敵CPUをなぎ倒していくテレビゲーム(それは、ヒットした作品のタイトルを引用してファンから“無双もの”と呼ばれる)を意識しているものと思われる。
もしかすると、Yの心の奥底には、秋葉原事件の加藤死刑囚と同じような闇、格差社会へのルサンチマンが広がっていたのか。
だが、一方で、Yは加藤死刑囚のように実際に無差別殺戮を起こしたわけではない。ドローンという最先端のテクノロジーを使い、誰も傷つけることなく、自民党政権=官邸が生み出した福島の汚染土を官邸に返してみせた。それはある意味、とても見事な政治的パフォーマンスだったといっていい。
しかも、彼がこの方法をとったのはたまたまではなかった。退職後の14年7月18日のエントリーで、Yはこう書いている。
〈3.11後は盛り上がってた・・・それでも大飯は再稼動した/デモは各地で続いてる・・・らしい・・・マスコミも取り上げなくなった/デモで再稼動は止まらない・・・暴動にもならない/再稼動まで時間ないからデモは一旦パス・・・/再稼動に反対する活動ではなく再稼動を止める活動をしなくては・・・〉
〈破壊活動とテロの区別・・・難しいな・・・/今は何でもかんでもテロ扱いだから・・・/殺傷せずに何かを破壊・・・デモ以上テロ未満・・・/いや・・・再稼動を止めるためにはテロをも辞さない/再稼動すれば加害者・・・なら再稼動を止めて加害者のほうがいい/具体的に何をするか・・・何ができるか・・・〉(エントリー・「ゲリラ戦」より)
そう、彼はデモというやり方に限界を感じながら、しかし、テロにはならない方法を模索していた。「デモ以上テロ未満」のパフォーマンスを狙っていたのだ。その結果がドローンによる官邸への“汚染土返却”だったのである。