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左巻き書店の「いまこそ左翼入門」①

虐げられた無名の者たちよ、ピケティよりもマルクス『共産党宣言』を読め!

 そもそもこの書はほんとうに「共産党」宣言なのか。先に述べたようにこの書が綱領として書かれた組織名は、「共産主義者同盟」であって「共産党」ではない。中央の厳格な統制による現在の共産党イメージの原型をつくったのはレーニンの前衛党論であり、『共産党宣言』とは無縁である。初版では『Manifest der Kommunistischen Partei』 であったが第二版以降『Das Kommunistische Manifest』となり「Partei(党)」という言葉は失われているように、「党」という概念が重視されていたとは言い難い。こうした問題意識に立って『共産主義者宣言』という新しいタイトルを与えたのが金塚貞文の翻訳(太田出版。のち平凡社ライブラリー)である。解説の柄谷行人は自分の発案であると述べている。さらに『筑摩書房マルクス・コレクション』では、今村仁司の主導の下、「共産主義」という言葉には生産組織としての側面が強すぎ、コミューン(共同体)としての解放的ニュアンスが伝わりにくいとして、手垢にまみれてしまった「共産主義」さえ放擲し『コミュニスト宣言』のタイトルが採用されている。ようやく党派的利害による改作が施されていない翻訳が手にできる時代がやってきたのだ。

 マルクスや共産主義関係文献といえば、日本共産党中央によって、以前から定着している「暴力」「プロレタリア独裁」の訳語の印象が悪いとして「強力」「プロレタリア執権」に改めると政策決定されれば、その系統の出版物の翻訳が全て変更されるという党派操作のもとでしか読めない時代があった。いまようやく初めて、党派性から解放されたマルクス理解のできる条件が整えられている。

『共産党宣言』は「共産党」宣言ではない、「共産主義者」宣言であり、「コミュニスト」宣言であると知った時、この書の読みは解放され、もっと自由になる。

 では、『共産党宣言』(便宜上一般に流布しているこのタイトルを用いる)をマルクスのかっこいいセリフとともに読もう。

『共産党宣言』といえばまず階級闘争史観をおさえなければならない。

「今日に至るまで、あらゆる社会の歴史は、階級闘争の歴史である」との有名な一節にその歴史観が端的に表現されている。自由民と奴隷、貴族と平民、領主と農奴など抑圧する者とされる者の絶え間ない闘いが歴史として展開されてきた。その階級闘争の歴史は、ついにブルジョア階級とプロレタリア階級の対立に至る。封建社会を打ち倒したブルジョアが支配階級となった現在の社会のありよう、ブルジョア階級が果たす役割が克明に描かれている」
「ブルジョア階級は、世界市場の開拓を通して、あらゆる国々の生産と消費を国境を超えたものとした。反動派の悲嘆を尻目に、ブルジョア階級は、産業の足元から民族的土台を切り崩していった」
「そうした産業はもはや国内産の原料ではなく、きわめて遠く離れた地域に産する原料を加工し、そしてその製品は、自国内においてばかりでなく、同時に世界のいたるところで消費される。国内の生産物で満足していた昔の欲望に代わって、遠く離れた国や風土の生産物によってしか満たされない新しい欲望が現れる」
「かれらはすべての民族に、存続と引き換えに、ブルジョア階級の生産様式の採用を強制する。かれらはすべての民族に、いわゆる文明を自国に輸入することを、すなわち、ブルジョア階級になることを強制する。一言で言えば、ブルジョア階級は、かれら自身の姿に似せて世界を創造するのだ」

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