しかし、被災地はまだ復興途上で避難生活を余儀なくされている人が23万人余もいる。優先順位の高い、他にやるべきことはたくさんあるはずだ。
ショック・ドクトリンのもうひとつの問題は、拙速にコンセンサスなしに推し進められてしまうことだ。前述の水産特区も、地元漁協にも漁民にもいっさい相談なしに発表された。確かにいまの漁協依存体制は、いつかは改革しなければならない面がある。水産特区もうまくいけば価値のある改革になるかもしれないのに、強引な進め方が反発を生み、当初の青写真とは似ても似つかない方向へ向かうこともある。宮城県の水産特区構想も宮城漁協との対立が2年半も続いた後、ようやく動き始めた。構想発表当時の村井知事の言葉が地元紙に紹介されている。「県漁協は反対しているが、前向きにとらえる組合員もおり、社会実験としてやってみたい」。要するに、知事の頭の中では一連の改革は“実験”ということなのだ。実験ということは、当然、失敗の可能性もある。そのリスクを疲弊した被災地に押し付けることは許されるのか。「疑問が頭を去らない」と古川は書いている。
(野尻民夫)
【特別企画 3.11を風化させるな! 被災地で原発で何が起きているのか(第一弾)(第ニ弾)(第三弾)(第四弾)(第五弾)(第六弾)】
最終更新:2015.03.10 07:05