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【特別企画】3・11を風化させるな! 被災地で原発で何が起きているのか

被災者はモルモットか? 東北で復興に便乗した社会実験、人体実験が始まっている

「ゲノムだのメガバンクだのと言われても、私らにそんな難しいことはわからない」「だいたい去年の8月なんて、まだ高台移転がどうなるかとか、明日のこともわからず毎日生きていくだけで必死だったところ。そんなゲノムだなんて聞いても頭に残らない」。こんな話を古川はそこここで聞いた。ヒトの遺伝子情報は究極の個人情報といわれ、その集積はセンシティブな問題を含んでいる。ゲノムコホート研究はまさに「人体実験」そのものだ。それを医師不足という被災地の弱みにつけ込んで受け入れさせた、研究倫理上の問題がある、と批判する専門家も少なくない。だが、肝心の被災者たちは十分な知識がないため表立った反対の声すらあがっていない。それどころか、「東北大学から錚々たる先生方がやってきて大変ありがたいことです」と話すお年寄りまでいたという。

 その一方で、明日の薬にも困る人たちがたくさんいる。被災地では最先端の研究施設をつくるより、まずはきちんと元の医療水準にまで引き上げることが何より求められている。だが、そうしたまっとうな意見は「単なる復旧ではなく、未来に向けた創造的復興を目指す」(村井嘉浩・宮城県知事)という言葉にかき消される。それが、いまの被災地の現状なのだ。

 この東北メディカル・メガバンク構想は東北大学(仙台市)を中核に進められている。東北被災3県の中でも「創造的復興」にとくに熱心なのが村井嘉浩知事率いる宮城県だ。村井知事は防衛大卒の自衛官出身で、退官後に松下政経塾で学び、県議を経て2005年に自民党の推薦で知事に初当選した。軍隊式のトップダウンで大規模事業を推し進めることを得意とし、その背骨には財界やシンクタンクから吹き込まれた市場主義、新自由主義的な思想があるといわれている。第二次安倍政権が発足し、アベノミクスが推進されるようになると、さらにこの傾向に拍車がかかった。復興推進委員会のメンバーも入れ替わり、トップに経済財政諮問会議の議員でもある伊藤元重氏が就任し、委員には外資系のシンクタンク関係者やアイリスオーヤマ、トヨタ自動車東日本の社長などが入り、復興特区を作って外資の誘致や民営化を進める方向が鮮明になった。

 その村井知事がいま前のめりになっているのが「水産特区」と「仙台空港の民営化」だ。

 水産特区は漁業法によって漁民に独占的に与えられている沿岸漁業権を民間企業に開放するというものだ。震災で船を流されるなど壊滅的な打撃を受けた漁村に民間資本を呼び込んで復旧を加速させようというアイディアである 。企業の下で漁民に就業機会を与え、漁民をサラリーマン化することでもある。個人個人が新たに借金をして船を買い直すより手っ取り早い。震災から2カ月後に村井知事が突如、提唱したものだ。漁業の効率化、復興の促進につながるという触れ込みだった。だが、経済合理性だけを追求する企業の参入に不安を抱く漁民は多い。不漁が続き採算が取れなくなっても、企業は漁業を続けられるのかという話である。

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