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「男しか行けない場所=風俗」に女が潜入取材してみたら理不尽なことだらけだった

 イライラポイントは、「客たちが全員、すまし顔で入ってくること」にあったという。

「女の子がミニスカートを履いていて、大きな鏡で太ももが見られて、顔に近づいたおっぱいにドキドキする店だって絶対分かってるくせに、『……あれ? なんですかここ? 普通の理髪店じゃないんですか? 普通の店だと思って来ました。……まあ仕方ないですね、もう入っちゃったし。髪切ってもらえればいいんで、僕は』みたいな顔して入ってくるのである」

 そのせいもあってか、漏らすようにつぶやいた理容師ギャルの「女の人の頭触るの、久しぶりだから嬉しい…」という言葉が、田房氏の耳に残ることになる。

 しかし、うっとおしいことばかりではない。社長は背の小さい哀川翔、専務は前髪オールバックの嶋田久作、舎弟は眉毛を剃っている長髪長身ヴィジュアル系という、「完全なるヤーな風貌の従業員の方たちが出迎えてくれた」のは、ラブドールと性行為ができるドール風俗店。 

 舎弟がふたりから「おい、テツ!」と呼ばれていたことも田房氏の胸を熱くさせたが、それだけではなかった。ドールの撮影をするため、3人がポージングを作ってくれていたときだった。

「ドールはけっこう重たいので3人がかりで『エイやっ!』とか『よいしょぉっ!』とか『テツ、足持て、足!』とか言いながら」
「そのうえドールの首がゴリンッ! と後ろに回転したりする。みんな真剣なので笑わないように必死で我慢していたら、自分の腕に顔をうずめて肩を震わせているテツさんが目に入った」

 こんなにも印象的なシーンに出くわしても、やはりありのままを描けるわけではないから、田房氏のもどかしさは募る一方だ。

 気に掛かる出来事は、取材とは関係のない場所にもおとずれることがある。 

 それは「龍宮城風ガールズバー」に知人のアラフォーサラリーマン男性と入店取材したあとの、居酒屋でのことだった。3歳と0歳のこどもがいるひとりの男性は、「最近、洗体にハマっている」と言い、「妻にバレないように、徹底的に、“土壌”を作っている」というのだ。つまり毎日激務を装い、「仕事が夜6時に終わっても夜8時に終わっても、終電で帰ればいいという日常を設計し、実行している」のだ。

 そう話す男性に対し、田房氏は憤慨する。

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