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埼玉はダサい? 無個性? でもその埼玉が日本の消費の流行を作り出していた!

 つまり、「埼玉化する日本」ならぬ、「埼玉の行動は常に現象化していく」ということ。北陸新幹線の金沢−東京開通を来月に控え、埼玉県は「ようこそ埼玉キャンペーン」と銘打って小江戸・川越の歴史散策、秩父・長瀞での紅葉観賞やライン下りなどで観光地化を狙うようだが、こうやって無理くり手を打つよりも、「消費のいいところどり」を淡々と希求していくほうが埼玉らしいのではないか。それが、東京の名前をかざしたレジャーランドに頼りながら関東第三県を言い張る千葉県よりも確かなアイデンティティになるのだ。

 この著作の惜しい点は、鉄道事情についての議論が根こそぎ欠けている点だ。埼玉は基本的には鉄道が全て都内を目指して縦に走るために、横断する文化が成り立ちにくい。埼京線と西武線と東武東上線などがそれぞれ都内から伸びていく特殊構造は、埼玉県に、確かな利便性と確かなコンプレックスをダブルスタンダードで蓄積させていく。移動は車が基本のマイルドヤンキーは、鉄道文化とは乖離している場合が多いが、埼玉はまだまだ鉄道に依存している。

 北尾トロ・えのきどいちろう『みんなの山田うどん』(河出書房新社)の鼎談に参加した政治学者の原武史が、西武と東急が相互乗り入れを始め、埼玉・所沢と神奈川・横浜が一本でつながった後、所沢駅の構内ショップが軒並み横浜や自由が丘の名を掲げた東急系ショップになっていることに苦言を呈していたが、この埼玉ならではの鉄道環境は「埼玉化」の考察には必須だろう。

 マス消費も高感度消費も自由に選べる埼玉県の特性、「無個性」を「身動きの自由」に変換してきた埼玉県の在り方は、全国に波及する力を持っている。『ヤンキー経済』には対象となる層を見くびるきらいがあったが、『埼玉化する日本』には当事者ならではの野心がこめられている。多摩地方出身の自分、「埼玉化」とついつい共闘したくなる。
(武田砂鉄)

最終更新:2018.10.18 05:01

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