27日にイスラム国から公開された画像を伝える日本国内のニュース(YouTube「ANNnewsCH」より)
イスラム国人質事件をめぐり情報が錯綜している。一時は「交渉が成立し、近いうちにイスラム国が後藤健二さんを解放する」との情報が流れたが、その後は再び交渉が難航しているとの見方が広がり、本日朝には「現地時間の29日木曜日の日没までに、リシャウィ死刑囚をトルコ国境に連れてこなければ、ヨルダン軍のパイロットのムアーズ・カサースベは即座に処刑される」という新たなイスラム国のメッセージがアップされた。
いずれにしても、交渉は完全にイスラム国ペースで進んでおり、日本もヨルダンも厳しい判断を迫られていることは確かだろう。とくに、追いつめられているのがヨルダンで、自国パイロットの解放を優先しなければ当然、国内世論が黙っていないが、日本からは後藤さんの解放協力を要請され、イスラム国もあくまで解放は後藤さんひとりと主張。一方、同盟国のアメリカからは「人質の交換には応じるな」とプレッシャーをかけられている。
ヨルダンとしてはどうなっても反発を受けるのは必至で、ただでさえ、国内情勢が不安定なところに、大きな火種を抱え込まされたかたちなのだ。
今後の行方はまだ不透明だが、こうした状況に専門家から「そもそも日本政府がヨルダンを頼ったこと自体が間違いだったのではないか」との声が上がっている。
日本政府は少なくとも後藤さんがイスラム国に拘束された昨年11月にヨルダンに現地対策本部を置き、以来、交渉窓口をヨルダン政府に委ねてきた。しかし、ヨルダンは親米国であるだけでなく、現状、もっとも激しくイスラム国と対立している国であり、イスラム国空爆の有志連合にも参加している。当然、イスラム国との直接的な交渉ルートがあるわけでもない。むしろ、その選択がイスラム国を硬化させ、解決を大幅に遅らせたのではないかというのだ。
いや、解決を遅らせただけではない。日本がヨルダンに現地対策窓口を置いたことで、イスラム国側は敵対国に揺さぶりをかけようと、リシャウィ死刑囚の解放を持ち出したと考えられる。つまり、日本政府の選択が無関係なヨルダンを巻き込み、イスラム国側に新たなカードを与えてしまった可能性が高いのだ。
では、日本はどうすればよかったのか。同志社大大学院教授で中東問題の専門家・内藤正典氏は、26日のテレビ朝日『報道ステーション』に出演した際、こう話した。
「今となっては遅いのですが、事件発生当初の段階で、(日本政府が協力を)トルコに要請をしていれば、まず、トルコ国民は日本の要請に関していえば、ほぼ100パーセント好意的にみるんですね。日本の為になにかしなければいけないと(トルコは)思う」
「しかも人質を49人昨年とられて、3ヶ月におよぶ交渉のすえ、全員無事解放している。なおかつ米軍の対イスラム国の攻撃要請に対しては頑として首を縦に振らない。攻撃のためには基地を貸していない」