見る見るうちに、監視カメラ・指紋・顔認証など個人への監視網は強まっていくが、どれもいまいち関心が高まっていかないのは、むしろ、「監視されている」を「見守ってくれている」とポジティブに変換する国民が増えているから。ジャーナリスト・青木理の著書『青木理の抵抗の視線』(トランスビュー)には、警視庁が「民間業者が設置している防犯カメラの映像と警視庁が所有する手配被疑者らの画像を自動照合するシステムの試験運用を始めた」との指摘がなされているが、監視カメラについての意識調査では8割を超える人が肯定的に捉えていることからもこの動きも広がるだろう。「せめて運用のルールや歯止めの手段ぐらいは明確にしておかねば、監視網は際限なく拡大しかねない」という指摘に耳を傾ける人は少ない。
監視されることを歓迎する一方で、気に入らないヤツは日本に入れないで欲しいと国に嘆願する……鎖国化を求めるかのような空気すら漂う。ナンパ師・ジュリアンなんて大迷惑な男は日本に入って来て欲しくもないが、「来て欲しくない人を国に食い止めてもらおう」という判断は、諸手を挙げて監視社会を容認していく態度表明のようなもの。いい加減、幼児的なパラサイトナショナリズムから卒業しないと、いつのまにか国家の奴隷にされていた、なんていう結末になりかねないと思うのだが……。
(高田ドリアン)
最終更新:2018.09.27 01:01