テレビ朝日『報道ステーション』HPより
安倍首相が解散会見を行った11月18日、夜のニュース番組にちょっとした異変が起きた。
通常、解散のような大きな政治的決断をした後は、各局のニュース番組に首相自ら出演するのが慣例になっている。実際、この日の夜も安倍首相は『ニュースウオッチ9』(NHK)を皮切りに、『NEWS ZERO』(日本テレビ系)、『NEWS23』(TBS系)に立て続けに出演した。
『NEWS23』では景気に対する街の声を番組側が紹介したところ「厳しい」という意見のほうが多かったため、安倍首相が逆ギレする一幕もあったが、とにかくこれらの番組では、安倍首相自身が顔を出して、解散理由を述べていた。
ところが、その中で、安倍首相が出演しなかった番組がある。それは、古舘伊知郎がキャスターをつとめる『報道ステーション』(テレビ朝日系)。この日の『報ステ』のトップは解散ではなく高倉健の訃報で、冒頭から延々と高倉健の回顧特集が流された。かなりの時間が経ってから、ようやく解散のニュースになったが、共同会見の映像が放映されただけで、安倍首相の単独取材映像は1秒もなかった。
そんなところから、メディア関係者の間では「朝日嫌いの安倍首相が、嫌がらせでテレビ朝日だけ拒否した」「以前、『報ステ』に出演したときにいろいろ突っ込まれたため、古舘のインタビューは受けないと逃げたらしい」といった見方が広がっている。
たしかに、メディアに対する異常な検閲姿勢と批判されることを極度に嫌がる安倍首相ならありうる話。しかし、テレビ朝日の関係者によると、事情はまったく逆だという。
「テレビ朝日の政治部は安倍首相サイドに根回しして、他の番組同様、『報ステ』への出演の内諾を取り付けていた。ところが、古舘さんが『やらない』と拒否したらしいんです。政治部はせっかくお膳立てしたのに、とカンカンですよ」
なんと、袖にしたのは古舘側だったというのだ。たしかにいわれてみれば、テレビ朝日政治部は朝日新聞ほど安倍首相と関係は悪くない。早河洋会長、吉田慎一社長はむしろ、本サイトで既報のように、何度も官邸を訪ねるなど、安倍首相とべったりの関係を築いている。
では、古舘はなぜ拒否したのか。原因はまさにその安倍首相に恭順の意を示すテレ朝上層部との関係にあったようだ。
「安倍政権はメディアへの圧力を強めているため、テレ朝側としてはとにかく政権を刺激したくない。ところが、古舘さんはじめ、『報ステ』スタッフは安倍首相に批判的なため、あまり厳しい質問をしないように上層部が釘を刺した。それで、古舘さんが『だったらやる必要はない』という話になったらしい」(前出・テレビ朝日関係者)
これが事実なら、古舘の意気やよし!という感じだが、しかし、同時に俄然、信憑性を帯びてくるのが、『報ステ』打ち切り、古舘降板説だ。