「ほんとは10時以降は25%アップなんですけど、夜11時以降でプラス100円ってぐらい」(居酒屋バイト)
「(店長が)さらっと『残業代はウチは出ない』というので、面白いなというか」(雑貨店バイト)
法定労働時間外に発生する割増賃金や深夜手当の未払い等は労働基準法違反である。当然看過されてはならないが、なかにはアルバイトを軽視しているのか、こんな珍妙な“現物支給”さえ存在するという。
「夜10時以降は仕事しても物々交換みたいなヤツなんですけど、物々交換のものがネギなんですよ。使えないじゃないですか。あとご飯。冷凍されたご飯。しょうがもくれます。ミョウガ。薬味が多いです」(居酒屋バイト)
お金のかわりに薬味で誤摩化そうとは……。もはや法がどうこう以前の問題だ。
他にも本DVDには、異常な長時間労働や、いわゆる自爆営業的な行為がまかりとおっている現状が明かされている。
「週5で入ってて、1日8時間から9時間とかで、(中略)夜勤とか明けた日に、そのまま家に一回帰って、そのままお風呂入って、またバイト行って。また帰ってきて夜勤行くみたいな」
「23時から翌日10時まで働くということをやったこともある。正直、死にそうになりました」(ともに牛丼店バイト)
「スコーンとかマフィンとか、菓子パンですよね。廃棄ってわかっているものは、6掛けとかの値段で食べろ(と命令された)」(カフェバイト)
「クーポンがいっぱい挟まっているクーポンブックみたいなの。売らなきゃいけなくて。私、フロントなんで、なんかノルマみたいなの。売れなかったら自分で買わなきゃいけなくて。結局使わずに3000円捨てるっていう」(カラオケ店バイト)
もはや一部のバイトは“ブラック職業訓練校”となっているわけだ。由々しき事態としか言いようがない。
ところが、こういう状況について抗議をし、改善要求をすると、企業側からは「働くということはそういうことだ。学生バイトだからといって甘ったれるな」「社員はもっと大変なんだぞ。文句言うなら辞めちまえ」という恫喝がかえってくる。ある種の買い手市場である昨今、序列の低い学生バイトの労働環境改善は二の次という風潮が支配しているのだ。
ブラックバイトに遭遇した人はこうした身勝手な企業側の論理にごまかされず、労働基準監督署やユニオン、労働関係の弁護士などに相談して、徹底して闘ってほしいところだ。というのも、ブラックバイトの問題はたんに悪辣な労働条件という以外に、もうひとつ深刻な問題をはらんでいるからだ。