サバイバルといっても、震災や事故だけではない。誘拐されたり、人質になってそこから生き延びた人もいる。わずか10歳にして誘拐され、その後8年もの間、地下室に監禁されたのは、オーストリアのウィーンで生まれ育ったナターシャ・カンプシュ。与えられたのはたった5平方メートルの地下室で、彼女は奴隷として、家の中では犯人のきっちり1メートル後ろを歩かされた。眠るときは手錠をかけられたし、髪をそられたり、たびたび殴られては歩けなくなることもあったほど。それでも屈することなく、犯人の持ってくる本や新聞を読み漁り、ラジオで教育番組やクラシックを聴いては独学で勉強した。そして、18歳のとき、庭で車の掃除をさせられていた彼女は、犯人の携帯が鳴ってその場を離れた隙に脱走し、無事に保護されたのだ。誘拐や監禁では、何年も何十年もの長い間、いつまで続くかもわからない過酷な状況で精神を保ち、生き延びなければならない。彼女はわずか10歳でその精神力を持っていた。
こうしたエピソードを読んで感じるのは、やはり人間の生命力の強さだ。御嶽山でもあきらめるのはまだ早い。まだ捜索できていない場所もたくさんある。1人でも多くの生存者が見つかることを願ってやまない。
(大島計一)
最終更新:2018.10.18 04:59