『なぜ世界でいま、「ハゲ」がクールなのか』(講談社+α新書)
ハゲと言えば、一般的にはモテない男の象徴として扱われている。事実、AGAメンズ品川スキンクリニックが女性1200人に「気になる男性の見た目」を聞いた調査結果によると、20代女性の35.5%が「薄毛」と答えており、「肥満」「肌荒れ」「むだ毛」を抑えてトップとなった。どんなイケメンでもハゲになってしまえば台無しだ。そんな恐怖があってか、ハゲに悩む男性が世に絶えることはない。
しかし、そんなハゲが世界で人気急上昇中らしい。アマゾン、ゴールドマン・サックス、マイクロソフト、ゼネラル・エレクトリック(GE)など名だたる企業の社長がハゲであり、ハゲこそが「クール」だという気運が高まっているというのだ。しかも、ハゲのほうがリーダーシップのポテンシャルが高いとみなされるという研究結果まであるという。ハゲに悩んでいる男性には、まさに朗報である。
『なぜ世界でいま、「ハゲ」がクールなのか』(講談社+α新書)では、こうしたハゲを巡る世界の最前線を克明にレポートしている。題名からしてトンデモ本のようにも思えるが、筆者の福本容子氏は毎日新聞論説委員であり、テレビのコメンテーターとしても活躍する立派な識者。海外での豊富な取材経験で得た見知をふんだんに盛り込み、「ハゲがクールである」という自説を205ページに渡って展開している。
ただ、最初に断わっておかなければならないのは、この本はハゲにある決断を迫っていることである。それは、「ハゲた頭を剃り、坊主になれ」ということだ。
社会学者、アルバート・マンズ氏の主張はこうだ。一般的な男性は薄毛を隠そうとしたり、植毛をしようとしたりする。しかし、「それが一般的であるからこそ、あえて頭髪をそり落とし、潔く活力の喪失を世間にさらす男性は、自力で執着を断わった強い男、活力のある、支配力のある男という印象を与える――」という。
さらに、552人を対象に「フサフサ」「薄くなりかけ」「坊主頭」の印象を調査したところ、支配力、自信の有無、男らしさ、リーダーシップの分野で「坊主頭」が最も高い数値を示した。ちなみに、一番低かったのは「薄くなりかけ」である。
確かにハゲを無理に隠そうとしたバーコード頭やバレバレのカツラよりは、ハゲを認めて潔く坊主頭にするほうが断然に男らしい。しかも、髪がフサフサしていた時より印象がよくなるというのだから、坊主にしない手はない。福本氏も「抜けていく一方の髪が気になって仕方なくて、何かしたいという人であれば、頭髪を剃ってしまうのが、いい」と本書のなかで、何度も読者を説得しようと試みる。