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安倍政権の健康診断“判定基準”の緩和は医療費抑制の「棄民政策」だ!

『日本の聖域』(新潮文庫)

 今年5月、健康診断の判定基準を大幅にゆるめる方針が打ち出され、各方面に衝撃を与えている。健康保険組合連合会と日本人間ドック学会が“150万人に上る受診者のビッグデータをもとに解析した成果”という触れ込みだが、「これまで『異常』と診断され、服薬を続けてきた受診者はいったい何だったのか」といぶかる声が吹き出しているのだ。

 新基準は、27の検査項目のうち半数以上で、「異常なし」と判定する際の基準値を大幅に緩和した。例えば、高血圧の上限を現行の「130」から「147」へと大幅に引き上げた。これにより、これまで「異常」とされていた血圧146~131の受診者は、いずれも「異常なし」と判定されることになる。

 血圧を必死に下げようと降圧剤を服用してきた“患者”は、中年層に多い。健康診断によってそれがパタリと止められるなんて、容易に想定できるものだろうか。同様のケースは、肥満やコレステロールの判断基準でも起きている。まさに、クロをシロと言いくるめるような機械的な仕分けなのだ。

 国民的な議論も前触れもなく、いきなり基準を見直してしまうあたり、安倍政権による集団的自衛権の拡大解釈と同じやり口ではないか。医療ジャーナリストはこう話す。

「基準見直しのそもそもの動機は、膨れ上がった医療費の抑制なんだ。2000年度に30兆円だった医療費は、2011年度には38兆円にまで増大し、国の財政を圧迫している。学会がデータ解析することで客観性を装っているが、実のところ、国が仕組んで、マスコミがじわじわと流布する構図だね」

 実際、この新基準が公表されたとき、読売新聞は「健診の基準緩和 薬剤費の削減につながるか」とそのものズバリの見出しで社説に掲げ、こう賛辞を贈っている。

「健康診断の新基準を健康管理に役立てることが大切だ。医療費の削減にもつなげたい。(中略)基準が厳しすぎれば、健康な人まで病人扱いされ、無用な不安を与える恐れがある。人間ドックでは、9割を超える受診者が何らかの異常を指摘されてきた。新基準が適用されれば、『異常』と判定される人は減るだろう」

 しかし、それでほんとうにいいのか。そもそも、検査基準のさじ加減ひとつで、「異常」から「健康」へとコロコロ判断を変えてしまえること自体、「健康診断」なるものの“まやかし”を露呈したも同然だろう。

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