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最高裁DNA判決は「“托卵”女性に甘い」は本当なのか?

『夫婦親子男女の法律知識』では、次のようなケースも紹介されている。

 ──夫とのあいだに子どもができず、第三者の男性の精子を使い、夫の同意のもとに人工授精を行い、出産した。けれど出産してから数年経って、夫が「この子は自分の子ではない。父子関係を否認したい」と言い出した。夫の訴えは認められてしまうのだろうか──

 現行の法では、夫の訴えは認められない。ただし、DNA鑑定が根拠として認められてしまったら、夫の訴えが通る可能性がある。

 ほかにも、性同一性障害で女性から男性に性別を変更した夫と妻のケースもある。妻は第三者の男性の精子による人工授精で出産。しかし、子が夫婦のあいだの子と認められなかったため、訴えを起こした。

 この裁判も最高裁までもつれこみ、13年に判決が出された。結果は「父と認める」。妻が夫の子どもを妊娠する可能性がないことは客観的に明白だが、法律上の父子関係が成立したのである。もしDNA鑑定を重視するのであれば、このケースは完全に否定されることになる。

 ほかにも、「精子バンクを使用した場合は?」「強姦被害にあって生まれた子どもの場合は?」などなど、さまざまなケースは思い浮かぶ。妻はまだいい。子どもが何も知らなかった場合、「DNAが違うから、お前は俺の子どもではない」とある日いきなり言われたとしたら、その子の生活はどうなってしまうのだろう。

 北海道の判決では、もしかすると父子関係を取り消されたほうが、その子にとっては幸せだったかもしれない。けれどその子1人の幸せのために、ほかの多くの子どもの利益が損なわれるのであれば、法律はそれを認めることはできない。

 今回の判決を受けて、インターネット上では「女性に甘すぎる」という声が大きいようだ。確かに、もし自分が「托卵」されていたとして、その子どもをどうしたって子どもでなくすことができないのは、心情的に納得がいかないかもしれない。

 しかし、DNA鑑定を全面的に認めるのには大きな問題があるのも事実だ。法律は女に甘いのではない。今まで生まれてきた、そしてこれから生まれてくる多くの子どものために作られ、運用されている。
(青柳美帆子)

最終更新:2014.07.30 01:45

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