「木梨憲武展×20years 公式ホームページ」より
大きな話題を呼んだ、東京・上野の森美術館で開催された木梨憲武の個展「木梨憲武展×20years INSPIRATION─瞬間の好奇心」。上野の森美術館では1日当たりの平均動員数がまさかのピカソ展、ダリ展に続く歴代3位を記録したという大盛況ぶりで、7月17日からは金沢21世紀美術館をはじめ全国で巡回をスタートさせる予定らしい。
しかし謎なのは、なぜ今、芸人としてはすっかりオワコンである木梨にそれほどまでの動員力があるのか、という点だ。しかも動員数だけでなく、作品評価も高いという不思議までつきまとう。たとえば、北野武や片岡鶴太郎、藤井フミヤに石井竜也、最近ではキングコング西野亮廣にいたるまで“芸能人のアート活動”にはめっぽう厳しいネット上でさえ、「美大生レベル」「自己満足」といった定番のツッコミ以上に「才能ありすぎる」「独創的だった!」「ノリさん最高」などの絶賛コメントが大多数。さらにはアート専門誌「美術手帖」(美術出版社)がインタビューを掲載しているほどなのである。
──この不可解かつイミフな木梨現象の怪奇。その真相に迫るべく、筆者は当日入場料1200円を投じる臍を固め、上野の森美術館に馳せ参じることにした。
平日の閉館1時間前。その日は朝から雨が続き、客足も鈍いはず……と睨んだが、美術館前には予想を裏切る黒山の人だかりが! しかも学生とおぼしき若者から20〜30代の会社勤めふうの男女、おばさん&おじさんのカップリング、子連れの家族まで、平日とは思えない幅広い年齢層の人が詰めかけている。割合でいえば、「仮面ノリダー」なんて知らなさそうな世代のほうが多い。「どうせラッセンの絵をありがたがっていた世代が客だろ」という決め込みは早々にくじかれてしまった。
もちろん会場も大混雑。入場まではスムーズだったが、なんでも80分待ちだった日もあったとかで、スプラッシュ・マウンテン並みの人気度ということになる。美術鑑賞が日常的とはいいがたい日本において、これはやはり異常事態である。