「通信教育大手のベネッセは2009年、人事を担う人財部のなかに『人財部付』という名の『追い出し部屋』を設けます。配属された社員は電話に出ることも禁じられ、名刺も持たされず、単純作業とともに『社内就職活動』を命じられます」(同書より)
このリストラのための「追い出し部屋」に配属されたある女性社員は、「あなたたちには問題があります。受け入れ先を獲得する活動をしなさい」と上司から指示され、配属後に下がった人事評価も、受け入れ先が見つからなければ、さらに下げるとも伝えられたという。
女性は提訴。12年8月、東京地裁立川支部判決は、人財部付が「実質的な退職勧奨の場となっていた疑いが強く、違法な制度」と判断し、この部署への異動も「人事権の裁量の範囲を逸脱したもの」として「無効」を言い渡している(高裁で和解)。
このブラックぶりにベネッセはブラック企業大賞2013の「教育的指導賞」を受賞しているほどだ。
「ベネッセはこれまでに労働環境無視のコストカットをしています。顧客情報のアウトソーシングも当たり前。今回の情報漏えいもグループ企業から顧客データベース(DB)の管理を再委託されていた保守管理会社の関係者によるものとされていますが、コストカットの末の起こるべくして起きた問題なのです」(労働ジャーナリスト)
さらに、原田氏は7月2日の就任後初の経営方針説明会で「500人規模の社員異動、人材の戦略的再配分を実施する」と断言。「人の数は十分いる。作業的なものは外部委託すればいい」とベネッセのマック化を促進する考えを示している(「週刊東洋経済」(東洋経済新報社/7月12日号)「ニュース最前線 “マック化”するベネッセ 原田人事で早くも軋轢」)。
同記事によれば、早くも社内での軋轢も紹介している。
「『8月から別会社に転籍し5年上限の契約社員になるか、転籍に同意しない場合は退職となる』」「コールセンター業務を10年近く担ってきたベネッセの特定職社員は5月下旬、突然そう告げられた」のだという。
「特定職社員」は転勤がない以外はほぼ一般社員と同じ業務を担うものだ。にもかかわらず、引き続き「業務を続ける場合、勤務地が東京から札幌、岡山、福岡に移る。この特定職社員は『よく生きる(というベネッセの企業理念)が聞いてあきれる』と不満顔だ」という。今回の対象となる特定職社員は100人規模だ。ベネッセは2年連続、ブラック企業大賞を受賞することは間違いない!?
(田部祥太)
最終更新:2014.07.11 08:09