ジャニーズのスキャンダルは報じても、作家のスキャンダルは報じない週刊誌
実際、瑠麗氏は「文藝春秋 電子版」の新番組だけではなく、本誌の「文藝春秋」2023年2月特別号でも成田悠輔や東浩紀らと日本の国防をめぐる鼎談に参加しているほか、「皇族に恋愛の自由を」なる論考を寄稿するなど、「文藝春秋」の常連。じつは文藝春秋との付き合いは古く、2015年に文春新書から『日本に絶望している人のための政治入門』を出版して以降は、2018年に『あなたに伝えたい政治の話』、2019年には『政治を選ぶ力』(橋下徹との共著)『それでも、逃げない』(乙武洋匡との共著)、2021年には『日本の分断』と、コンスタントに文藝春秋から新書を発表している。また、前述した文藝春秋読者賞では選考顧問を務めている。
これは新潮社も同様だ。瑠麗氏は「週刊新潮」で2016年から「週刊「山猫」ツメ研ぎ通信」なる連載を担当していたほか、『国家の矛盾』(高村正彦との共著)『21世紀の戦争と平和』『私の考え』『不倫と正義』(中野信子との共著)を出版。昨年11月には、2019年に発売した単行本『孤独の意味も、女であることの味わいも』が文庫化されたばかりだ。
そもそも、「週刊文春」と「週刊新潮」は、たとえ関係の深い相手でも平気で寝首をかいて記事にするメディアだ。「週刊文春」を快進撃に導いた「文春砲の産みの親」とも呼ばれる新谷学編集長(現在は「文藝春秋」編集長)が「親しき仲にもスキャンダル」と口にしてきたように、それを実践してきた。実際、両紙とも保守系政治家や内閣調査室といった内閣の情報機関とも太いパイプを持っているし、芸能事務所との付き合いもあるが、そうした関係を裏切って相手がピンチに立つような記事を書いてきた。
だが、文藝春秋にも新潮社にも共通するのは、ともに老舗の文芸出版社であるという点だ。そのため、他の出版社以上に「作家タブー」が強く、政治家や芸能事務所相手では平気で裏切ってスキャンダル報道を飛ばすのに、親しい作家がらみとなると途端に弱腰になる。以前、作家の林真理子は「どうすれば文春に書かれないようになるか」と訊かれた際、「文春の執筆者になること」「作家はもっと大丈夫」と答えたことを「週刊文春」の連載エッセイで明かしていたが、つまり、これと同じ「作家タブー」が瑠麗氏にも発動され、スルーしているのである。
実際、「週刊文春」と「週刊新潮」では、これまでも「作家タブー」をめぐって似たようなことがたびたび起こってきた。
その典型が、2014年に巻き起こった百田尚樹の『殉愛』騒動だ。故・やしきたかじんの妻をテーマにした同書をめぐっては、周知のように、妻の結婚歴などさまざまな嘘が発覚。たかじんの長女からも名誉毀損で出版差し止め訴訟を起こされるなど大きな問題となった。ところが、小説『フォルトゥナの瞳』を連載して単行本化したばかりだった「週刊新潮」は、百田氏に妻のインタビューをねじ込まれ、それを掲載した。