『エルピス』そのものの癒着は現実に横行! 萩生田“統一教会問題報道”でもテレ朝の番記者が暗躍…
本日26日に最終回を迎える『エルピス』(関西テレビ)は、本サイトでも既報のように(https://lite-ra.com/2022/11/post-6242.html)、国家権力の犯罪である「冤罪」をメインテーマに据え、権力の横暴、それに加担するマスコミの問題の責任を追及する姿勢が全体に貫かれているドラマ作品。そして作中では、副総理に食い込んでいる政治部官邸キャップの斎藤正一(鈴木亮平)が、副総理に不都合な調査報道に横槍を入れ、さらにはテレビ局幹部が忖度して一大スクープを報道せずにストップをかけるという描写が出てくる。
つまり、現実の総理番がインタビューで発した「相手が心地いいと思える距離で、相手の心に寄り添う」という発言は、あまりにも『エルピス』が描くメディア内部の描写とそっくりで、〈まさに「エルピス」の世界やな〉〈本人もさることながら、業界そのものが腐り切っているのだ。『エルピス』まんまではないか〉という指摘の声があがったのだ。
ドラマ内で描かれているのとまったく同じで、腐りきった構造がメディアにある──。それは現実世界の政治報道を見れば、よくわかるものだ。
たとえば最近なら、統一教会との関係が大きな問題となった自民党の萩生田光一政調会長だが、萩生田氏は各メディアの番記者を通じて圧力をかけた結果、萩生田氏と統一教会の関係について追及する動きはフェードアウトした。しかも、萩生田氏が生稲晃子氏とともに八王子の統一教会施設を訪問していたことが発覚したあとにようやく開いたわずか5分程度のぶら下がり取材も、調整したのは萩生田氏が懇意にするテレビ朝日の女性記者で、この記者と萩生田氏が「質問は3問まで」と勝手に取り決めたという(「週刊新潮」9月1日号より)。この記者は「萩生田氏のお気に入りなのは公然の秘密」「氏が官房副長官時代、テレ朝が組閣人事のネタを抜けたのは彼女のおかげだった」と言われているという。
組閣人事など、ちょっと時間が経てば正式に発表されるだけのネタでしかない。今回、翔太郎氏がフジの総理番記者に漏らしたのではないかと問題になった大臣更迭のネタもそうだ。ところが、そんなものを「特ダネ」としてありがたがり、そのエサにありつこうと番記者たちがこぞって政治家と癒着関係となり、本来、報道すべき政治家の不都合な事実を暴けなくなっているのだ。
鮫島氏は『朝日新聞政治部』のなかで、こう記している。
〈出世の階段を駆け上るには、まずは各社の番記者を出し抜いて政治家に食い込み、特ダネを書かねばならない。大物政治家になると、テレビ局や新聞社、通信社の約15社が番記者を張り付ける。その中で「一番」を目指す。(中略)担当政治家と運命共同体となった番記者が政治家批判に及び腰になるのは当然である。そればかりか政治家に社内の取材情報を漏らして点数を稼ごうとする者さえいる。番記者制度が政治取材を劣化させ、マスコミの権力監視機能を低下させていることは間違いない。〉
歪んだ記者クラブ制度、そして番記者制度が、どうでもいい正式発表前のネタを掴むことを至上命題化し、権力の監視というメディアの役割を骨抜きにしている──。『エルピス』では、副総理が殺人事件の捜査に圧力をかけて冤罪を生み出していたというスクープが、こうした歪んだ構造のなかで潰される様が描かれているが、現実でもそうして闇に葬られた事実、追及されないままの事実がある。そういう意味でいうと、今回の翔太郎氏をめぐるリーク疑惑は、極めて重い意味を持っているのである。
(編集部)
最終更新:2022.12.26 05:01