フジテレビ総理番記者が「取材相手が嫌なことはしない」「相手の心に寄り添う」と癒着ぶりを自ら開陳
そして、言わずもがな問題の元凶は岸田首相にある。翔太郎氏の首相秘書官抜擢は、自身の後継者である息子の箔付けでしかない、政治の私物化だ。しかも、辞任した葉梨前法相も寺田稔前総務相も宏池会所属で、岸田首相の「身内」「側近」大臣だった。ようするに、安倍元首相の「お友だち人事」「政治の私物化」と同じ問題を岸田首相は繰り返し、こうして混乱をもたらしているのである。
だが、今回取り沙汰されている翔太郎氏の「総理番記者へのリーク」疑惑は、もうひとつ、重要な問題を浮かび上がらせた。それは、権力側と記者がベッタリと癒着した関係にあるという問題だ。
今回、「FACTA」がオンライン版で該当記事を掲載したあと、SNS上では「フジテレビの総理番の女性記者」探しがはじまり、ある記事が拡散された。それは女性ファッション誌「JJ」のオンラインサイトが昨年12月31日に掲載した、「フジテレビ・20代女性政治部記者に聞く「総理番の仕事」って?」という記事だ。
問題になっているフジの総理番記者がこの女性記者かどうかは定かではなく、かつ上述の更迭報道にかかわっていたのかも不明だが、この記事には、政治記者の癒着体質がよく表れている。
このインタビュー記事のなかで、フジの総理番記者の女性は「総理の一番側近である秘書官に話を聞くのも大事な仕事になるので、それが終わったあと深夜に帰ることが多いです」などとその仕事内容について語っているのだが、SNS上で注目されたのは、「報道の部署にいる中で心がけていることや、大変なことはありますか?」という質問に対する回答だった。この総理番記者は、「大変なことは、取材先との距離の取り方でしょうか…」と言うと、こうつづけている。
「記者である以上、視聴者に届けるための情報を取ってこなければいけない、引き出さなければいけない。でもいきなり教えてくれるわけもなく、一方的な取材は失礼だし…試行錯誤の毎日です。こちらの都合で取材対象者の方にお話を伺うこともありますが、向こうも忙しいよな、向こうの都合もあるのに申し訳ない…と思ってしまいます。なので、私が取材先の立場だったら「嫌」と感じることはしないようにしています。相手が心地いいと思える距離で、相手の心に寄り添い、信頼されるような記者とは、と客観的に考えながら行動しています」
権力と対峙し、権力を監視する役割を担う報道の記者、総理番の記者が、よりにもよって「相手が心地いいと思える距離で、相手の心に寄り添う」ことを心がけていると語る──。翔太郎氏が大臣の更迭という内部情報を記者にリークしたのか、この女性記者がリークされたのか否かはわからないが、結局、番記者はこのような癒着ともいえる関係性、距離感で仕事をしているのだということがはっきりと理解できるインタビューだろう。
実際、内部告発ノンフィクション『朝日新聞政治部』(講談社)が話題となった、元朝日新聞記者の鮫島浩氏は、こうツイートしている。
〈朝日新聞政治部に長く在籍して首相官邸や自民党を取材する報道各社の数多の政治記者と接してきた私から見てフジテレビの彼女は決して特異な存在ではなく極めてスタンダードな総理番記者です。各社の幹事長番や官房長官番もさして変わりはありません。それを念頭にテレビ新聞の政治記事を読みましょう!〉
さらに、このフジの総理番インタビュー記事をもとにネット上であがったのが、「ドラマ『エルピス』のようだ」という意見だった。