東京五輪スポンサー選定で電通が300億円以上の巨額報酬 入札を骨抜きに
果たして「竹田ルート」が存在したのか。今後の捜査の行方に注目しなければならないが、しかし、東京五輪汚職では、刑事責任が問われていない“本丸”は、ほかにもいる。
その最大の悪はほかでもない、高橋容疑者の古巣で、東京五輪を牛耳っていた巨大広告代理店・電通だ。前述した竹田前会長への賄賂配分でも、電通幹部が高橋容疑者からあらかじめ説明を受けていたと報道されたが、これにかぎらず、高橋容疑者の汚職のほとんどに電通が関わっていた。
自分の懇意にしているスポンサーを電通につなぐ、あるいは電通の持つ利権を新興の企業に分け与えさせて賄賂を得る──。高橋容疑者の汚職は電通抜きには成り立たないと言っても過言ではない。
しかも、電通は高橋容疑者に一方的に利用されていたわけではない。電通は高橋容疑者と一体化した結果、東京五輪で、当初想定された金額の約6倍となる300億円以上もの利益を得ていたことが判明した。
この問題を詳報した読売新聞18日付記事によると、2013年12月、東京都とJOCなどはスポンサー募集を担う「マーケティング専任代理店」選考の説明会において、大手広告代理店4社の担当者に対し「スポンサーは単純入札で選ぶ」「報酬手数料は3%」と説明していた。
ところが、この説明に反発したのが電通だった。電通は「これでは利益が見込めない」とし、電通のスポーツ局は社内会議で「手数料は8%」「単純入札ではない方法で獲得する」との独自案を幹部に説明。個別交渉では〈手数料のさらなるアップを求め、組織委側に最大15%を主張する場面もあった〉という。
そして、2014年12月に組織委が結んだ電通との契約では〈スポンサー料の累計額に応じ、電通の手数料率が上昇する「成功報酬型」〉となり、〈読売新聞が独自に入手した契約書によると、手数料率は1800億円までで3~8%、1800億~2000億円で8%、2000億円超は12%〉にも跳ね上がったというのだ。ちなみに、電通がこれほどの手数料を貪る仕組みをスポンサー企業は伝えられていなかったという。
こうした結果、電通の手数料収入はなんと300億〜350億円にも上った、というのである。当初の組織委が想定した案だった場合、電通の利益は約56億円だったというから、電通は結果的に約6倍もの暴利を貪ったことになる。
そして、この電通による法外な手数料ビジネスをアシストしたのが、高橋容疑者だった。
2018年6月におこなわれた組織委の理事会で、約660億円のマーケティング収益に対して、IOCやJOC、電通に計約260億円の手数料が支払われていたことをある理事が問題視し、「なぜこんなに手数料を支払うのか」と質問した。すると、組織委理事だった高橋容疑者はこの発言に逆ギレ、「電通は人を出している。赤字覚悟でやってるんだ!」と声を荒げたという(読売新聞8月20日付)。
電通が手数料率を当初の想定より最大4倍にまで跳ね上げさせたというのに、「電通は赤字覚悟でやってるんだ!」とはよく言ったものだが、高橋容疑者はこのように電通をことあるごとに援護射撃して、その利権を守り、巨大化させる役割を果たしていた。