「こども庁」から「こども家庭庁」への名称変更に動いた安倍元首相ら極右議員 その背景に
「こども家庭庁」への名称変更に統一教会が関与していた形跡は、そのほかにもある。
まずあらためて振り返ると、本サイトでも既報のとおり、そもそも「こども庁」創設の構想は、菅政権時の2021年2月から自民党の山田太郎参院議員や自見はなこ参院議員ら若手有志議員がスタートさせた勉強会が起点となっている。そのときは「子ども家庭庁(仮称)」としていたのだが、第6回目の勉強会に招かれた虐待サバイバーである風間暁氏が「家庭は地獄でした」と自身の経験を語り、その言葉を受けて「こども庁」に変更。菅義偉首相も岸田文雄首相も名称を「こども庁」としてきた。
にもかかわらず、政府は2021年12月15日になって、自民党の会合で「こども家庭庁」に変更する修正案を示し、これを自民党が了承。同月17日におこなわれた自民党総務会でも了承され、政府は「こども家庭庁」の創設を含む子ども政策の基本方針を閣議決定したのである。
「家庭は地獄」という当事者の声を受けて変更した経緯があったというのに、わざわざ「こども家庭庁」に戻す。この裏側で起こっていたのが、安倍元首相をはじめとする自民党極右政治家たちによる圧力だったことは、いまさら説明するまでもない。
しかし、問題は安倍元首相ら極右議員を誰が動かしたか、だ。
じつは、「こども庁」を「こども家庭庁」に戻すというこの反動的キャンペーンでは、ある学者が先頭に立っていた。その学者とは、あの「親学」というトンデモ理論を提唱する高橋史朗氏だ。
本サイトでは繰り返し批判してきたが、「親学」は戦前の家父長制的家族観をベースに、子育ての責任を家庭、とりわけ母親のみに過大に押し付ける考え方で、たとえば「児童の2次障害は幼児期の愛着の形成に起因する」などと主張し、“子どもを産んだら母親が傍にいて育てないと発達障害になる。だから仕事をせずに家にいろ”と科学的には何の根拠もないことを振りかざす差別的なトンデモ教育理論。提唱者の高橋氏は「生長の家」系組織で活動をおこない、現在も日本会議の中心メンバーを務めるゴリゴリの極右活動家だ。
実際、2021年11月29日に「モロラジー道徳教育財団」のHPに掲載された高橋氏のコラムによると、高橋氏が執筆した「こども庁」の問題点をまとめた冊子について、〈安倍元総理をはじめ、自民党の幹部にコピーを手渡したところ、早速自民党の4つのプロジェクトチームの合同勉強会や内閣部会での講演依頼があった〉と記述している。
さらに、その高橋氏に加え、安倍側近として知られる山谷えり子参院議員、有村治子参院議員ら自民党議員が顧問を務める極右団体「全国教育問題協議会」が同年11月30日に自由民主会館で役員会を開催。その席で、高橋氏は「こども庁」構想の経緯や論議について「わが国が築き上げてきた伝統文化や家族の温かい絆を破壊しかねない方向に向かっていることに深い危機感を覚える」とぶちあげ、「こども庁を蝕む『家庭』解体派に警鐘を」というタイトルの報告がHPに掲載された。
つづいて12月8日に自民党本部で開催された青少年健全育成推進調査会においても高橋氏は講演をおこない、講演の最後には山谷氏が「こども家庭庁に改めるべき」だという高橋氏の主張を強調した、という。これらの経緯を経て、12月15日に政府は名称変更を自民党会合に提示したのである。
こうした動きを見れば、政府が突如「こども家庭庁」への名称変更を提示した背景に、高橋氏の存在があったことは、もはや疑いようもない。
しかし、この高橋氏には統一教会と連携しているフシが見え隠れするのだ。
前述したように高橋氏は日本会議の中心メンバーだが、以前より統一教会系の団体で講師を務めたり、統一教会系メディアである「ビューポイント」に定期的に寄稿するなど、統一教会との接点が指摘されてきた。この「こども庁」名称問題においても、「ビューポイント」で繰り返し“こども家庭庁にすべき”と訴えていた。