自民党PT座長の三原じゅん子が町山智浩のツイートに漏らした「本音」とは…
実際、木村花さんの死を受け、自民党は「インターネット上の誹謗中傷・人権侵害等の対策プロジェクトチーム」を立ち上げ、安倍政権下の2020年6月に侮辱罪の厳罰化などを求める提言案を政府に提出したが、その座長となった三原じゅん子参院議員は映画評論家・町山智浩氏の〈木村花さんを政治に対する批判封じ込めに利用しないで欲しいです〉というツイートに対し、〈政治批判とは検討を加え判定・評価する事です。何の問題も無い。ご安心を〉と取り繕いながら、つづけてこう投稿したのだ。
〈しかし、政治家であれ著名人であれ、批判でなく口汚い言葉での人格否定や人権侵害は許されるものでは無いですよね〉
ようするに、最初から木村さんの死を利用して、表現の自由を潰し、政治家への言論を規制する気が満々だったのである。
そして、今回の侮辱罪厳罰化の審議では、こうした政治家への言論を規制したいという目論見に対し、何の歯止めもなされていないのだ。
刑法35条では「正当行為は罰しない」と規定され、侮辱罪の厳罰化をめぐる法制審議会の審議でも「政治批判など公益のための言論なら罰されない」という意見が出されているが、しかし、公益性があるかどうかを判断するのは権力側の捜査当局だ。事実、この法制審議会での議論に対し、言論法やジャーナリズム研究が専門の山田健太・専修大学教授は〈侮辱罪の免責の説明としてはあまりに牧歌的だし、実態にもあっていない〉と指摘。さらに、こうも述べている。
〈部会委員からは「侮辱はそもそも価値のある言説ではないから、違法性阻却を考える必要がない」との理解が示され大勢を占めていた。それゆえに侮辱罪に名誉毀損同様の公共性がある場合の特例(刑法230条の2の免責要件)を認めることは否定的で、一般市民の政治家への批判が、悪口では済まず「侮辱」と認定される余地があることを示している。〉(琉球新報2021年12月11日付「メディア時評」)
言わずもがな、「公人中の公人」である政治権力者、とくに政府・与党政治家は、ときに「口汚い言葉」になるような苛烈な批判も受け入れるべきものだ。そして、プーチン政権への批判を圧殺するために言論統制を強めているロシア政府を見れば一目瞭然であるように、いかに辛辣で品位を欠く表現であろうが、為政者に対して自由に批判できることこそが民主主義国家としての絶対条件、最後の砦だ。ところが、このままでは為政者に対する正当な批判さえも「誹謗中傷」にすり替えられ、侮辱罪が適用される危険が高いのである。
しかも、街頭演説での市民のヤジを「憎悪」「誹謗中傷」呼ばわりし、「こんな人たちに負けるわけにいかない」などと市民を指差した安倍晋三・元首相や、水道橋博士のツイートに対して訴訟をちらつかせた日本維新の会の松井一郎代表をはじめとする為政者の振る舞いを見れば、批判的言辞に対して「侮辱だ」と恫喝をかけてくることは目に見えている。