「若者は受診せず家で寝ていろ」とトンデモ棄民方針を打ち出したコロナ専門家たち
まず、「病院を受診するな」ということによって、症状が軽い場合は検査を受けることもなく日常生活を続行させ、さらに感染を拡大させる原因になるだろう。また、専門家は「オミクロン株では若年層は症状が軽い」などというが、40度もの熱がつづいたり激しい咳に襲われても「軽症」に分類されているのがこの国の現状だ。当然、重症化することや死亡にいたる事態も十分考えられるのに“基礎疾患のない若者”だというだけで「自宅で安静にしていろ」というのは、あまりに危険すぎる。その上、「若年層」というが、その実態は「50代未満」なのだ。
さらに重要なのは後遺症の問題だ。昨年、東京都世田谷区がおこなった調査によると、軽症患者のうち60%が後遺症を訴えたというように、コロナ後遺症に苦しんでいる人は多い。しかも、『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日)によると、オミクロン株では療養期間中は症状が軽くても、療養期間後に「かなり強めの倦怠感」を訴える患者が多いという。若者が病院への受診を控えることで検査の機会がなくなり、コロナの確定診断がつかなかった人に後遺症が出た場合、適切な治療が受けられないだけではなく、コロナ後遺症だと認められず適切な補償を受けられないというケースも出てくるのではないのか。
このように問題を挙げだせばキリがないが、このまま「若者は黙って家で寝ていろ」というこの危険方針が現実化すれば、通常なら回復できた人が亡くなってしまうという最悪のケースを生み出すことも十分考えられる。しかも、こんなトンデモ方針を専門家が打ち出した背景には「社会経済を回すことで感染者が増えても、医療機関に過度な負担をかけずに済む」などという期待があるというのだ。感染症の専門家や医師は人命第一で物事を判断すべきはずだが、これではたんなる政府・経済界の手先ではないか。
実際、それでなくても政府分科会は「人流抑制より人数制限」などと打ち出し、尾身茂会長も「ステイホームなんて必要ない」と言い出す始末。だが、感染防止策がとられた飲食店において、ワクチン2回接種済みかつ少人数で会食した人たちの感染例があるように、人数制限だけで感染拡大を食い止められるはずがない。それどころか、「ステイホームなんて必要ない」という発信のアナウンス効果によって、さらに人流が増えて感染を促進する恐れさえある。
しかも、経済の専門家として分科会メンバーとなった小林慶一郎・慶應義塾大学教授にいたっては、21日放送の『モーニングショー』で「みんなが家から出なければ感染は収まるが、経済を止めることによって生活に困窮して亡くなる人が出る」と発言。これに玉川徹が「経済を動かして生活困窮者を守る以外に、国が所得などの補償をするという方法は考えないんですか?」と追及すると、「急に病床を増やせないのと同じで、自殺しそうな人を発見して財政的な支援をするというのも急にはできない」などと口にしたのだ。
この期に及んで感染拡大を食い止めることよりも経済を優先させ、ついには「若者は病院を受診するな、家で寝ていろ」とまで言い始める──。コロナ初期からこの国の専門家たちは検査・受診抑制を仕掛け、「GoTo」や東京五輪開催など感染拡大の要因となったキャンペーンやイベントにも正面から反対することもなく是認してきた連中ではあるが、「若者は検査しない」という狂気の提言案を含めた今回の一連の言動はあまりにおぞましく、到底許容などできないだろう。
だが、こうした動きはけっして「専門家の暴走」と片付けられるものではない。根本的な問題は無論、政府、岸田政権の無策にあるからだ。