在韓米軍は隔離終了前に韓国側がPCR検査実施、一方在日米軍はアメリカに丸投げ
説明しておくと、日米間には米軍の特権的な地位を定めた「不平等条約」である日米地位協定により、在日米軍には検疫を含めて国内法が適用されない。そのため、2020年7月に日米両政府はコロナ対策で在日米軍は「日本側と整合的な措置」をとると合意していた。だが、それを一方的に破られていた、というわけだ。
言っておくが、これは異常事態だ。というのも、地位協定は米韓でも結ばれているが、昨年12月24日放送の『報道1930』(BS-TBS)の取材によると、在韓米軍は出国時に検査を実施し、入国時もアメリカ側がPCR検査を実施。しかも、10日間の隔離終了前には、韓国側がPCR検査を実施しているというのだ。
一方で在日米軍の場合は、日本側による変異株検査を拒否。10日〜14日間の行動制限のみで、検査は5日目の一度のみで実施は米軍側。また、行動制限中も施設区域内の移動は自由で、ワクチン2回接種済みなど一定の条件のもと基地内でマスクを外しての活動も認めていたという。
ようするに、同じく地位協定を結んでいる韓国は出国時・入国時・隔離終了時と3回も検査を実施(しかも、うち1回は韓国側が検査)しているというのに、日本は在日米軍に任せきりで対策を放置。その結果、このようなことになってしまったのだ。
こうした対応の違いについて、沖縄国際大学の前泊博盛教授は「自国の主権を強調し、米軍に改善を求める姿勢の違いが日韓両政府の間で表れたのだろう」と指摘しているが(琉球新報2021年12月31日付)、いかに日本が「主権なき国家」であるかがコロナ対策でもはっきりしたと言えるだろう。
だが、日本の「在日米軍への犬っぷり」はこれだけではない。林外相は22日の会見で“感染者が確認された部隊では出入国時にPCR検査が実施されていなかった”としていたが、24日には多くの新聞朝刊が「すべての在日米軍の出入国時にPCR検査が実施されていなかった」「多くの部隊が未検査」と報道。すると、24日の閣議後会見で林外相はその事実をようやく認め、さらには、じつは2021年9月3日から米出国時検査を免除していたと公表したのだ。
どうして22日の時点でこのような重要な事実を確認・公表しなかったのか、あまりにも杜撰だとしか言いようがないが、しかし、林外相はあたかも「私が強い遺憾の意を直接ラップ司令官にもお伝えをした」結果として判明したかのように強調したのである。
これだけでも岸田政権の弱腰ぶりが見て取れるが、さらに驚くのはこのあと。沖縄県の玉城デニー知事は12月21日に日本政府と在沖米軍に対して「収束まで米本国から県内への軍人軍属の移動停止」「基地外への外出禁止」などを要請していたのだが、林外相が在日米軍関係者の外出制限を含む感染防止対策の強化をアメリカ側に申し出たのは、なんと昨日6日午前のこと。さらに、在日米軍が「基地外でのマスク着用を義務化」したのも、昨日になってのことだ。
ようするに、さんざん岸田政権は在日米軍に対して「強い遺憾」を伝えたと主張し、メディアも「岸田首相が在日米軍の対応に憤慨」などと伝えてきたが、たんに怒っているフリをしているだけで、何も結果に結びついていなかったのである。つまり、「怒ってる感」による「やってる感」でしかないのだ。