介助者の帯同を日本が認めず参加断念するパラ選手も 「合理的配慮」も理解しない組織委にパラ運営の資格なし
それを証明するのが、これまでパラで6個ものメダルを獲得してきた米・競泳女子のレベッカ・マイヤーズ選手の出場辞退だ。マイヤーズ選手は盲聾で母親が介助者を務めているが、米オリパラ委員会(USOPC)が「34人の水泳選手に対して、介助者を1人しか派遣できないとしたため」(FNNプライムオンライン7月22日付)に、母親の帯同が許されず、辞退に至ったという。
34人もの水泳選手たちに対して介助者が1人──。選手1名に対して1名の介助者でも足りないぐらいで、信じられない体制だとしか言いようがないが、しかし、これはUSOPCだけの問題ではない。というのも、米ワシントン・ポストによると、USOPC側は「必要な運営スタッフ以外の入国を日本が認めないのが理由」としているからだ。
さらに、7月22日におこなわれた組織委の会見ではこの問題について記者から質問がなされたが、組織委は「我々も報道で拝見した。事実関係にかんしては選手の参加意向にかかわることなので、USOPCのほうにご照会いただきたい」と述べただけ。ようするに、USOPCに責任を丸投げしたのだ。
必要な介助者が入国できないという問題が起こっているというのに、それを無視する組織委。この組織委の姿勢は「合理的配慮の提供義務」を定めた障害者差別解消法違反だとさえ言えるが、そんな連中に大会運営の資格があるはずないだろう。
「パラ中止」論に対しては、「五輪を開催しながらパラは中止するのはあまりに不平等だ」という声もある。それは当然の意見だろう。しかし、介助者の帯同というパラ選手が競技に挑むにあたって整えられるべき最低限の環境を守ることもできず、さらには感染したときに医療にアクセスできるかも不確実な状況下でパラ開催など不可能だ。
菅首相は五輪開催を強行する際に「心のバリアフリーを世界に発信する」などと述べ、パラを五輪開催のダシに使ってきたが、再度言っておく。この国に暮らす人びとの命を守ることを約束できない国で、パラリンピックの開催は無理だ。ましてや、子どもたちまで危険を晒すことは、断じて許されない。
いまは学校連携観戦の参加を判断する自治体や学校に対し、保護者のみならず市民が反対の声をあげ、子どもたちを守ることが重要だ。しかし、そもそも「即刻、中止」しか選択肢はないということを、ここにはっきりと指摘しておきたい。
(編集部)
最終更新:2021.08.17 11:51