一旦「肺炎症状がある中等症の方はそのまま入院」と口にしながら、「本当ですか」と念押しされたとたん……
たとえば、立憲の山井和則衆院議員は「(中等症1の)いちばん苦しい肺炎の症状でも入院もできない、これは人災ではないのか」と指摘し、方針撤回を訴えたが、これに対して田村厚労相は「誤解がある」「肺炎症状がある中等症の方はそのまま入院していただきます。それはそういう話なんです」と明言。この田村厚労相の答弁に、山井議員は「本当ですか? 肺炎症状のある中等症1の方はいままでどおり入院できるんですか? 確認します」と言質をとろうとしたのだが、すると、田村厚労相は逆ギレしたかのように語気を強めて、こう述べたのだ。
「肺炎症状があって苦しいと言われている方、息ができない方、重症化されるって方は、これは当然入院。いま委員がおっしゃられましたから、そのまま、(中等症)1であったとしてもそうです! 1ならば必ず退院というわけではありません! それは昨日も申し上げました! 医師会のほうに! ちょっと厚生労働省のほうからどうお聞きをいただいているのかわかりませんが、中等症1でも、当然重症化する方々、リスクの高い方々は当然これは入院であります! 当たり前です!」
山井議員は「本当に肺炎症状があったら入院できるのか?」と確認したのに、田村厚労相の答弁は「肺炎症状があって苦しい、息ができない、重症化されるって方」「重症化する方々、リスクの高い方々」というもの。これでは肺炎があっても「重症化する」と判断されなければ入院されないのではないかと疑問を持たざるを得ない。
だいたい、田村厚労相は軽々しく「重症化する方々」などと答弁したが、重症化するかどうかは簡単に判断できないと医師や専門家からは指摘が続出している。実際、きょうの国会でも、在宅医の経験がある医師の立憲・中島克仁衆院議員が「最初は画像診断で肺炎所見がなくても、数日間40度の発熱があって、中等度なのか軽症のままなのか(在宅医は)判断できませんよ?」と指摘。また、4日付のNHKニュースでも、自宅療養していた40代男性のケースを紹介。この男性は自宅療養中に高熱が出て病院に搬送されたものの、酸素飽和度が低くなかったために自宅へ戻されたが、その後呼吸が苦しくなって再び病院に搬送。そのときはすでに酸素投与が必要な「中等症2」の状態になっていたという。
この例ひとつをとっても、「中等症1」の患者を自宅に放置することは非常に危険な行為であり、いますぐ政府は方針を撤回し、他国がやってきたように大規模な療養所の設置やホテルの確保を急ぐべきだ。ところが、そうした意見を田村厚労相は「デルタ株は大変な脅威」などという周回遅れの主張でシャットアウトしたのである。
いや、それどころか、この医療崩壊状態を食い止めるには新規感染者数を減らす必要があるのは言うまでもないが、政府は入院すべき患者を自宅に放置しようという方針を打ち出しながら、新規感染者数を減らすための方針については、せいぜい「夏の帰省や旅行を控えて」と言うだけ。これはあまりにもアンバランスではないか。
本サイトでは繰り返し指摘してきたが、菅政権がいま打ち出すべきは、人流抑制に絶大なアナウンス効果が期待できる五輪の即刻中止だ。それによって、なんなら選手村を療養所に転用することもできる。だが、それもせず、国民の命を危険に晒す政策を先に決めるなど言語道断。田村厚労相は「(いまは)平時ではない」と答弁していたが、平時ではない緊急事態に五輪を開催しているなどというのはありえない。菅首相は「自宅放置」方針の撤回と五輪の中止をいますぐ打ち出すべきである。
(編集部)
最終更新:2021.08.04 10:46