『もの言うキャスター 大越健介がみた「現代」』(主婦と生活社)より
6月30日にNHKを退局したキャスターの大越健介氏が、10月から『報道ステーション』(テレビ朝日)の新メインキャスターを務めること発表された。
『報ステ』といえば、この数年、安倍・菅政権とべったりのテレビ朝日上層部の意向で、政権の不正や失政をチェックする姿勢を持つコメンテーターやスタッフを次々外し、ほかの政権忖度番組と変わらない状況に陥りつつあったが、今回の大越キャスター就任の報を受け「これで少しマシになるかもしれない」と期待の声が上がっている。
というのも、大越キャスターは、安倍首相に敵視され、『ニュースウオッチ9』のキャスターを降ろされた経緯があるからだ。
ときはまさに『報道ステーション』が古賀茂明氏の「I am not ABE」発言をきっかけに、安倍政権の圧力を受け、古賀氏と同氏を起用した松原文枝プロデューサーが更迭されたのと同じ2015年3月。大越氏はNHKの看板番組『ニュースウオッチ9』のキャスターを5年つとめ、視聴者からも高い人気があったのだが、2015年春の人事で突如、キャスターが交代になり、外されてしまった。
NHKでは毎年秋ごろ、幹部による「キャスター委員会」という会議が開かれ、各番組の次年度のキャスターを誰にするかが話し合われる。春の番組改編でキャスター交代の可能性があれば、ここでリストが挙げられ検討される。前年秋の委員会では『ニュースウオッチ9』のキャスター人事は俎上にすら上がっていなかった。
にもかかわらず、予定外のキャスター交代が発令されたのは、大越キャスターのニュースの間にはさむコメントが「安倍首相のお気に召さなかった」ことが原因だった。
大越キャスターは政権批判を声高に叫ぶタイプではないが、それでもNHKのキャスターの中では、原発問題や歴史認識問題などでも、きちんと真っ当な自分の意見を口にするため、安倍首相が敵視。周辺にも、露骨に大越キャスターの悪口を言っていた。
そして、2014年の総選挙圧勝を受けて、テレビ各局に報道圧力を強めはじめた流れのなかで、“NHK内の代理人”といわれていたあの岩田明子記者を使って、大越おろしに動いたといわれている。
当時、この大越キャスターの『ニュースウオッチ9』降板の裏に、安倍官邸の圧力があったことは「週刊現代」も報じている。「週刊現代」といえば、NHKの内部情報に圧倒的な強さを見せ、昨年秋も菅首相の子飼いである山田真貴子内閣広報官(当時)が同じく『NW9』有馬嘉男キャスターの菅首相への質問の仕方に抗議を入れ、有馬キャスターを降板に追い込んだことをスクープしている。
今回、安倍官邸の大越おろしの裏側に迫った2015年3月のリテラ記事を再録する。大越キャスターの起用によって、『報道ステーション』が本来のジャーナリズムの在りようを取り戻すことを期待したい。
(編集部)
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