東京2020オリンピック競技大会公式ウェブサイトより
いまだ東京五輪の強行開催に向けてひた走る菅義偉首相。政府分科会・尾身茂会長が「いまの感染状況で開催というのは普通はない」と発言したことを受け、昨日2日におこなわれたぶら下がり取材では記者から「いまの感染状況でも五輪を開催すべきだと首相が考える理由は?」などと質問されたが、なんと菅首相は「まさに平和の祭典。一流のアスリートがこの東京に集まってですね、そしてスポーツの力で世界に発信をしていく」などと答えた。
まさかの「平和の祭典だからやる」。無責任だとか熟考が足りないなどという次元を超えて、もはや「ヤバさ」しかないが、ようするに感染状況や医療提供体制がどんな状況でも「俺が決めたんだから五輪はやる」ということらしい。
だが、この無謀な計画の犠牲となるのは、わたしたち市民だ。そして、実際に東京五輪の開催と引き換えに、感染状況などお構いなしの危険な準備は着々と進んでいる。
そのひとつが、「救急搬送を担当する消防職員らを東京五輪で約3万人配置する」というものだ。
この問題を報じたしんぶん赤旗5月30日付記事によると、〈東京消防庁は、競技会場に大会期間中、のべ約3万人の消防職員と消防団員を配置する〉と説明。この消防職員には救急隊員も含まれているのだ。
2020年版の「東京の消防白書」によれば、東京消防庁の職員は約1万8700人、消防団員は約2万6700人で、合わせて約4万5000人だ。東京五輪に投入される3万人はのべ人数ではあるが、相当な割合の消防庁職員・消防団員が五輪に動員されてしまうということは間違いない。
さらに、〈救急車については都内に24ある競技会場に「観客用1台、選手用1台」を配置し、大きな会場にはさらに配置する予定〉なのだという。
新型コロナの感染の広がりによって、東京都では救急の搬送困難(医療機関への受け入れ照会が4回以上かつ現場滞在時間が30分以上)の事例が昨年4月から1週間あたり400件を下回ったことが1度もなく、今年1月には搬送困難事例が1500件を超えた。つまり、医療機関の逼迫によって救急隊員の業務も厳しさを増しているということだ。
そんな状況下で、救急体制の公的資源を五輪に投入するなんてことが許されるのか。