NAOMI CLUB(YouTube)より
東京五輪開閉会式の「総合統括」を務めるクリエイティブディレクター・佐々木宏氏が、渡辺直美を豚にするルッキズムと女性蔑視丸出しの演出案を出していた問題。佐々木氏は辞任を表明したが、今回の問題であらためて露わになったのは、日本のテレビと、お笑い芸人たちの意識の低さ、差別容認体質だった。
この間、ワイドショーが一斉にこの問題を取り上げているが、ルッキズムに対するまともな批判や反省はほとんどなく、逆に、多くの芸人コメンテーターが佐々木氏の演出案が告発されたことや「週刊文春」の報道に、批判、疑問の声をあげているのだ。
まず、多かったのが「内輪のLINE」「企画段階でのボツ案」にすぎないものを告発し、問題するのがおかしいという主張だ。
たとえば、ケンドーコバヤシは18日放送の『ゴゴスマ』(CBCテレビ)で、「アイデア出しの会議はアドレナリンが出て、発言の是非はともかく、とにかくアイデアを出すもの」「こういう情報が流出したことが問題。責任を取るなら流出させてしまった人」とコメント。爆笑問題の太田光も21日放送『サンデー・ジャポン』(TBS)で「今回のグループLINEは企画以前のたたき台」「われわれも漫才をつくるときに、漫才つくる過程というのは人に見られたくない」と、佐々木氏を擁護した。
しかし、これらのコメントは、問題の本質をまったくわかっていないか、意図的に問題をすり替えているとしか思えない。
そもそも、東京五輪の開閉会式というのは、世界中の国や地域が参加し、国民の税金が注ぎ込まれる公的なイベントなのだ。その演出を検討するために正式に選ばれたメンバーの議論なのだから、それが正式な会議であれ、LINE上でのアイデア出しであれ、公的なものとして批判に晒されて当然だろう。いや、それが仮に家族や友人などプライベートな場での発言であったとしても、五輪の演出担当は公的な存在なのだから、性別や容姿を差別する発言があったとすれば、その資質を問われても仕方がない。
ところが、こうした芸人たちはその公的な場で行われた差別を問題にするのではなく、差別を告発した側、報道した側を責めるのだ。
連中がいかに公共や人権というものを軽視しているかがよくわかるが、さらに呆れたのが、松本人志のコメントだった。松本は、21日放送『ワイドナショー』(フジテレビ)で、かまいたち・山内健司の「謝って撤回したものを1年後に引っ張り出してきて叩くっていうのがびっくり」というコメントに、我が意を得たりといった調子で、こう語った。
「そうなのよ。調理場まで入ってきてまだ料理できてないのに、できてもないものつまみ食いして、おいマズいよって言われてるようなね。もちろんこの方のアイデアは良くないんですけどね」
このコメントにはネットで「さすが」「うまいこと言う」などという賞賛の声があがっていたが、全然違うだろう。松本の喩えになぞらえれば、今回のケースは、世界各国からの客を招くパーティで、使ってはいけない食材や禁止されている添加物を使用しようとしたというものなのだ。撤回したとしても、それを使おうとしたシェフの資質を問うのは当たり前ではないか。
それを「試作段階でつまみ食いしてマズいと言った」と矮小化するとは……。松本はそのあと、申し訳程度に「良くないアイデアなんですけどね」と付け加えていたが、おそらく本音では、佐々木氏のアイデアが差別表現だとはつゆほども思っていないのだろう。