玉川徹の「なぜこれだけ検査まで時間がかかったのか」に対し検査抑制論を主張し続ける橋下徹
実際、これは羽田議員だけの問題ではない。韓国の首都圏では無症状で感染者との接触がなくとも無料で誰でもPCR検査が受けられる態勢を拡大させているが、かたや来年には五輪をやろうという首都・東京では、濃厚接触者や有症者でなければ、保健所に申し入れても検査を受けられない。
感染の不安があれば、羽田氏のように自費で民間の検査を受けるしかないのだが、その民間検査も多くは現在予約がいっぱいで誰でもすぐに受けられる状況ではない。また、民間検査は自費のため1〜3万円前後もかかり、一般市民が受けるには経済的なハードルも立ちはだかっている。
そういった点を考えても、やはり公的検査の対象範囲を広げるべきなのだ。陽性者と接触のあった人や基礎疾患などリスクのある人などは、本人の希望があればすぐに公的検査を受けられる体制にする必要がある。
実は、羽田氏が所属する立憲民主党をはじめとする野党4党は、3月の段階で「PCR検査拡充法案」を提出するなど国に検査体制の整備強化を訴えてきたが、政府は例の「4日間ルール」を見直したくらいで、検査体制をほとんど強化しようとしなかった。羽田氏のコロナ死が検査の遅れと直接的に関係があるかどうかは検証する必要があるが、少なくとも、その死が検査体制の整備の必要性を再認識させたことは間違いないだろう。
だが、そんな羽田氏の死を受けても、むしろ「検査抑制論」を唱える人物がいる。たとえば、橋下徹氏などもそのひとりだ。
橋下氏は、玉川徹氏が28日放送の『モーニングショー』で「なぜ、これだけ検査まで時間がかかったのか」「アメリカなんかは(来年)3月末までで1週間で2億回、検査ができる形になるんですよ。ワクチン接種も始まっているのに、まだまだ検査を増やそうとしている」とコメントしたことを受け、スポーツ報知の記事を引用リツイートするかたちでこう主張したのだ。
〈回数を増やす問題ではない。有症状者や濃厚接触可能者、震源地やハイリスク地の無症状者に迅速的確に検査をやることが重要。〉
〈検査の回数ばかり増やしても、アメリカは、感染者数も死者も抑制できていない。必要な対象者に迅速的確に検査をする必要がある。回数の問題ではない。〉
この反論が自己矛盾を起こしていることに、橋下氏は気づかないのだろうか。というのも、橋下氏は「回数を増やす問題ではない」と言うが、いまより「有症状者や濃厚接触可能者、震源地やハイリスク地の無症状者に迅速的確に検査をやる」には、検査および検査回数を増やすしかないからだ。
しかも、このツイートは死亡に至った経緯が福山幹事長から発表される前のものだとはいえ、羽田氏は東京=ハイリスク地在住者であり、濃厚接触者ではないものの感染者との接触もあった。さらに容態が急変する危険性を考えても、検査の拡充によって陽性者をいち早く捕捉することが重要なのは言うまでもない。