百地章のコメントを紹介した『ニュースウオッチ9』(番組HPより)
日本学術会議の任命拒否問題をめぐる菅義偉首相の答弁の支離滅裂ぶりが止まらない。任命拒否したことの理由として菅首相は「多様性が大事」などと言い出しているが、30日におこなわれた参院本会議では新たに「7つの旧帝国大に所属する会員が45%を占めている」と主張したのだ。
菅首相はいかにももっともらしく答弁したが、こんなものが説明として成り立つと考えたのなら相当な大バカだ。言うまでもなく、6人を任命拒否したところで旧帝大所属の割合が大きく変わることなどないが、それどころか今回排除された6人のうち3人は旧帝大所属でもないのだ。いや、「多様性」というのなら、旧帝大所属云々以上に割合を増やすべき女性である加藤陽子・東京大学教授を外したのか。
そもそも、菅首相は今回の任命拒否の根拠にしている2018年の内閣府による文書でも「会員候補者が優れた研究又は業績がある科学者であり、会員としてふさわしいかどうかを適切に判断しうるのは、日本学術会議であること」と明記しており、菅首相が口出しできる立場では断じてない。というか、推薦候補者の名簿を「見ていない」と言っていた人間が、どうしてそんな判断をできるというのだろう。
このように、国会論戦のスタートと同時に菅首相は何の説明にもなっていない答弁しかできていないのだが、問題なのは、この無茶苦茶ぶりを指摘するメディアがあまりに少なく、国民にほとんど伝わっていないことだ。
それどころか、公共放送である「みなさまのNHK」まで、とんでもない報道をおこなった。
それは29日放送の『ニュースウオッチ9』でのこと。NHKは今回、日本学術会議の前会長である山極壽一・前京都大学総長にインタビューをおこない、番組ではその模様を放送したのだが、そこで山極前会長は杉田和博官房副長官の名指しするかたちで、2年前にも官邸から人事介入を受けたことなどを告白。すでに山極会長時代のこうした人事介入については毎日新聞が報じていたが、山極前会長がはじめてカメラの前で証言をおこなったインパクトは相当に大きい。
しかし、問題はこのあと。山極前会長のVTRが終わると、この山極証言について坂井学・官房副長官にぶつけた会見の模様が流されたのだが、つづいて出てきたのが、なんとあの百地章・国士舘大学特任教授だったのだ。