追跡調査にトレーサー3000人を新たに雇用したニューヨーク、日本はいまも保健所の増員追いつかず
それは他国の例と比較すれば一目瞭然だ。たとえばアメリカは、連日5〜7万人の新規感染者が出ているが、そんななか、一時は感染拡大地だったニューヨーク州ニューヨーク市では、22日には死者がついにゼロとなり、感染者数も10人前後に抑え込んでいる。そして、その背景には、徹底した検査と追跡、隔離がある。
実際、ニューヨーク州では、市民への無料検査を実施し、その可能検査数は1日最大約7万件以上にものぼる。しかも、希望すれば何度でも無料で再検査が受けられる上、美容師などの感染リスクの高い職種にかんしては定期的な検査が義務付けられているという。
しかも、ニューヨーク州では、大規模な検査と同時に濃厚接触者の追跡(トレーシング)にも力を入れ、この追跡をおこなうための「トレーサー」を3000人も投入。このトレーサーという仕事について取り上げた本日放送『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日)によると、「特別な知識がなくても一般的な社会常識があればなれるもの」。現在、このトレーサーを目指す人がアメリカでは増えており、どんどん増やしていく方針だという。
かたや日本では、保健所のパンクがあれだけ叫ばれたというのに、いまだに保健師やサポート要員の増員は追いついていない。安倍首相は日本のクラスター対策について「日本モデルの力を示した」などと誇っていたが、保健所は受診相談や入院先の手配などの業務に追われて追跡がまったく追いつかなかったのが実情。そしてすでに東京では同じことがおこりつつあるが、トレーサーのような追跡調査員を養成・配置しようという動きは見られない。
保健所や医療現場が逼迫しても抜本的な対策を打たず、新規感染者数が過去最多を更新しても見て見ぬふりをする一方で、権力を濫用して「夜の街」叩きに勤しむ──。これで感染爆発を抑え込めるわけがないのは、当然のことだろう。
(水井多賀子)
最終更新:2020.07.24 10:04