黒川氏の7000万円退職金を「なしにするとろくでもないところに流れていく」とトンデモ論理
もっとも、安倍首相との会食が発覚して批判を浴びたあたりから、こうした露骨な安倍政権擁護はしなくなり、最近では政権不祥事は極力取り上げないという姿勢に転換していた。
先週の『ワイドナショー』でも、検察庁法改正案に多くの芸能人が抗議の声をあげていたというトピックを扱った際、松本は、「1回やっちゃうと、『次やらへんのか?』とか『このことに関してどう思うねん?』が、これがちょっとなかなか大変なんじゃないのかなというのが、俺がやらない、やりたくない理由かな」「たいして知らないくせに、僕がなんかそこに一票を投じることで、僕に関心があるファンというかそんな人たちを引っ張り込むの申し訳ない」「全体にイエスとかノーで言える問題ではない」などと、これまでの政権擁護発言を棚に上げてとぼけていた。
しかし、今回は、ついその本音が漏れてしまったのだろう。一部報道には松本の「何重悪やねん」という発言を取り上げてあたかも松本が黒川検事長を強く批判していたように伝えているものもあったが、実際は「何重悪」という言葉は、ほかの出演者のコメントへの相づちのように口にしただけ。実際は誰のことを「何重悪」と言っているのか、黒川氏を批判したものかどうかすら明確ではないものだった。
そして、松本は黒川氏の責任問題や黒川氏の定年延長については一切触れず、ネトウヨの陰謀論ツイートにすっかり感化されてしまったのか、お得意のマスコミよるトラップ論をまくしたてたというわけだ。
松本のこの問題でのトンデモ発言はそれだけではない。黒川氏が訓告という軽すぎる処分でこのままでは退職金も全額支給される問題が紹介されると、「僕はこの7000万は受け取って欲しいんですよ。受け取ってどっかに寄付して欲しい」「これ無しにしてしまうと、またそのお金がね、ろくでもないところに流れていくだけですから」と、全額支給を正当化したのだ。
意味がわからない。7000万円を黒川氏が寄付する保証がいったいどこにあるのか。松本は「ろくでもないところに流れていくだけ」などと言っているが、それなら税金の使途をきちんとチェックすればいいだけだろう。ようするに、もっともらしい理屈をつけて、黒川検事長の7000万円の退職金受領を正当化したいだけなのだ。
しかも酷いのは、少し前に松本はこのコロナ禍のなかで、「水商売のホステス」への休業補償について「われわれの税金で、俺はごめん、払いたくはないわ」と切って捨てる発言をしていたことだ。困窮する弱者に対しては「払いたくない」と切り捨て、賭け麻雀という違法行為をした検察ナンバー2には「受け取ってほしい」ってどういう神経をしているのか。まさか「ろくでもないところ」って弱者支援のことを指しているんだろうか。
しかし、松本のこうした発言はメディアでもネットでもほとんど批判されていない。それどころか、「黒川検事長は新聞記者にハメられた」発言に「さすが松ちゃん」という安倍応援団からの賞賛コメントが集まっている始末だ。
安倍政権は今回の黒川検事長問題で危機に陥っているが、こういう強者の論理を正当化する人物がメディアで大手をふって跋扈している限り、この国の政治状況は絶対に良くはならないだろう。
(本田コッペ)
最終更新:2020.05.25 03:19