松井市長、吉村府知事の間違いを指摘できないメディアの弱腰ぶり
吉村府知事は、昨日4つのライブハウスを訪れた人々によるクラスターを制圧したと胸を張っていたが、大阪では感染者との接触の有無にこだわって検査をしているためなのか、検査拒否も数多く報告されている。実際、日本医師会の調査では、医師が保健所にPCR検査を依頼して断られたケースがもっとも多かったのは大阪府だった。さらなる感染拡大が進んでいる危険性も考えられるというのに、市長と府知事がこんな初歩的な誤読をしたり、ツイッターバトルにうつつを抜かしたりって、相当やばくないか。
メディアの責任も重大だろう。「大阪府と兵庫県の間の往来自粛」という非常に重大な施策を、市長や府知事の言うがままに、なんの検証もなく垂れ流している。昨晩から今日にかけて、この往来自粛要請をセンセーショナルに報じるメディアはいくつもあったが、尾辻議員が指摘したような疑問を呈するような報道はほとんどなく、誤読に基づいた誤った対策が放置されたままになっているのだ。
実は昨日、松井市長、吉村府知事の会見に続いて、兵庫県の井戸敏三知事も会見を開いているが、井戸県知事は兵庫県民に対し「大阪府やそのほかの地域への不要不急の行き来」を控えるよう呼びかけている。吉村府知事に兵庫県をディスられたためか、対抗して「大阪府や」と付けてしまっているのでわかりにくくなっているが、ようするに吉村府知事が今日公開した文書にあったとおり、「兵庫県内外の不要不急の往来自粛」(不要不急の外出自粛)を呼びかけているのだ。
しかも、大阪府の呼びかけが「20日からの3連休」に限っているのに対し、兵庫県では「3連休だけではなく、当面は次の専門家会議がある来週の火曜日まで」としている。どちらが、より厳しい対策か明らかだろう。ようするに大阪府は“やってる感アピール”のためだけに、「大阪・兵庫間の往来自粛」というセンセーショナルな対策に飛びついただけなのではないか(しかも誤読に基づいて)。
ところが、多くのメディアは、吉村府知事と井戸県知事の会見を放送しながら、「大阪府と兵庫県の間の往来自粛」(大阪府)と「兵庫県とそれ以外の地域の往来自粛」(兵庫県)とまったく違う対策を打ち出しているにもかかわらず、それを指摘したり、なぜ違ってしまっているのかということを掘り下げることなく、「大阪と兵庫に温度差」などと矮小化。あるいは吉村府知事が兵庫県のほうが実効再生産数(1人の感染者が生み出した2次感染者数の平均値)が高いと語っている部分や、井戸県知事が「大阪だってお互いさま。あまり、人のことは言わないほうがいい。コロナウイルスは県境に従って活動するわけではない」「大阪はいつも大げさ」と不快感をあらわにした部分などをクローズアップして、バトルのように面白可笑しく取り上げるだけだった。
まだまだコロナ感染の収束の見通しは立っていないが、こんな為政者とメディアで本当に大丈夫なのだろうか。
(編集部)
最終更新:2020.03.21 02:55