首相官邸ホームページより
もう呆れ果てるほかない。昨日25日、安倍首相が本部長を務める「新型コロナウイルス感染症対策本部」が感染対策の基本方針を決定したが、国民をはじめ自治体や企業に責任を丸投げする内容だったからだ。
まず政府は、今後は「重症者対策を中心とした医療提供体制等の必要な体制を整える準備期間」だとした上で、「国民が一丸となって新型コロナウイルス感染症対策をさらに進めていくため」に、国民にこう呼びかけた。
「感染の不安から適切な相談をせずに医療機関を受診すること、感染しやすい環境に行くことを避けて」
「手洗い、せきエチケット等を徹底」
「風邪症状があれば外出を控え、やむを得ず外出される場合にはマスクを着用して」
はっきり言って、「いまそれ?」とツッコまざるを得ない。専門家会議は「これから1〜2週間が急速な拡大に進むか、収束できるかの瀬戸際」と言うが、一体これのどこが「瀬戸際」の対応だというのか。政府はこの期に及んでも、小学生でもわかっているようなことしか打ち出さなかったのだ。
だが、もっとも開いた口が塞がらなかったのは、今後の感染状況の把握や医療体制についてだ。
政府はこれまで、感染を疑う人が「帰国者・接触者相談センター」に相談できる目安を、風邪の症状や37.5度以上の発熱が4日以上続いたり、強い倦怠感や息苦しさがある場合とし、基礎疾患がある人や妊婦はこれらが2日以上つづいた場合としてきた。だが、こうした条件をクリアしているにもかかわらず、相談センターに連絡しても病院への受診を勧められるだけで、病院や保健所に相談しても「検査はできない」と断られたという人の悲痛な訴えがSNS上では溢れている。
こうした事態を受け、政府もさすがに今回の基本方針で、このような「たらい回し」を防止する方針を打ち出すはずだ──そう多くの人が願っていたはずだが、しかし、政府は事ここに至っても、何の対応策も出さなかったのだ。
基本方針の「(2)国内での感染状況の把握」を読むと、今後の方針として、〈地域で患者数が継続的に増えている状況では、入院を要する肺炎患者の治療に必要な確定診断のための PCR検査に移行しつつ、国内での流行状況等を 把握するためのサーベイランスの仕組みを整備する〉とあるだけ。
これはあまりにも酷すぎるだろう。そもそも、患者集団が発生している地域以外、どうしたらいいのか何も言及しておらず、一体どうすればいいのかさっぱりわからない。さらに患者集団が発生している地域でも軽症者は状態が変化するまで受診できないのであれば、そのあいだに感染を広げる可能性もあるし、受診段階で重症になっている場合も十分考えられる。
実際、24日に感染者として発表され、重症で入院中と報じられた神奈川県の50代男性は、14日に38度の高熱を出し、17日に医療機関を受診、19日に別の医療機関で肺炎と診断されたものの「37.5度以上の発熱が4日以上」という基準を満たしていなかったためにPCR検査をせずに自宅で療養していたという。だがその結果、発熱や呼吸苦などが続き、PCR検査を受けて感染が確認されたのが24日。このときすでに男性は重症化していたのである(毎日新聞24日付)。
ようするに、重症化しなければ検査・治療が受けられないという政府の方針では、さらに重症者を増やしてしまうとしか考えられないのだ。