武漢市で死去した日本人男性について会見する安倍首相(首相官邸HPより)
新型コロナウイルスにかんする安倍首相の対応に「また“やってる感”か」と批判があがっている。安倍首相は8・9日と地元・山口で地元支援者を集めた新年会を開催する予定だったが、新型コロナウイルスの対応を理由にこれをキャンセル。だが、蓋を開けてみれば、対応をとるために公邸に控えているべきなのに、両日とも私邸で大半を過ごし、8日に安倍首相が官邸にいたのはたったの約1時間で、中国・武漢で肺炎を発症していた日本人男性が亡くなったことを受けて応じたぶら下がり取材もわずか約1分。9日は官邸にいた時間は約40分だった一方、官邸をあとにして向かった美容室では約1時間40分もかけていたのだ。
ようするに、「桜を見る会」問題につづいて「会費が安すぎるのでは」と疑念が高まっている地元での新年会を中止するための方便に新型コロナウイルスを使っただけにすぎないことがはっきりとしたわけだが、ここにきてもうひとつ、安倍首相がいかに「感染症対策」を都合よく私物化の材料にしてきたかが浮き彫りになっている。
ご存知の通り、安倍首相は加計学園の獣医学部新設について、「感染症対策」の必要性を持ち出し、このように主張してきた。
「鳥インフルエンザなどの人獣共通感染症が家畜等を通じて国際的に拡大していくなかで、地域での水際対策の強化や新薬の開発などの先端ライフサイエンス研究の推進など、獣医師が新たに取り組むべき分野の具体的需要が高まっていることから、これに対応する特例措置として獣医学部の設置を国家戦略特区のメニューとして追加した」
「新たな時代を切り開く先端ライフサイエンス研究や感染症対策に強い獣医師を重点的に育成する」
まさに、いまこそこの「特例措置」によって誕生した研究機関が本領発揮するべきときがきたわけだが、しかし、実情はまるで違うらしい。
というのも、2月7日の衆院予算委員会で医師である立憲民主党の阿部知子議員が質疑に立ち、萩生田光一文科相に「今般の事案(新型コロナウイルス)に対して、加計学園はどんな活動をしておられますでしょう?」と質問したのだが、その回答は、こんなものだったからだ。
「今般の新型コロナウイルスを踏まえた取り組みについては、岡山理科大学に確認したところ、今後の感染症、微生物学に関する講義のなかで取り扱うことや、今後、開催するシンポジウムにおいて情報発信・啓発をおこなうことを検討しているとの回答でした」
この切迫した状況で「今後、講義で扱う」「シンポジウムで情報発信を検討」って……。この答弁には阿部議員も「講座を開いていただいても、それは研究とは申しません」とツッコんでいたが、まさにそのとおりだろう。
しかも、萩生田文科相は、新型コロナウイルスのデータ収集や診断、治療薬の開発研究のために「海外の拠点で感染症研究をしている9つの大学に調査研究の検討を指示した」と述べたが、阿部議員が「確認ですが、9つの大学のなかには加計学園は入っていませんよね?」と質問すると、萩生田文科相はこう答弁したのだ。
「講座は開いておりますが、まだ2学年生しかいらっしゃらないということで、この9つの大学には入っておりません」