首相官邸HPより
公選法や政治資金規正法、贈収賄という疑惑がかけられている「桜を見る会」の安倍晋三後援会主催「前夜祭」問題だが、昨日3日おこなわれた衆院予算委員会において、安倍首相の口から信じられない発言が飛び出した。なんと「脱法」行為に総理自らお墨付きを与えたのだ。
そもそも、安倍首相は先週1月31日の予算委員会でも唖然呆然となるような驚きの答弁を繰り出した。たとえば、これまで安倍首相は「前夜祭」の会場入口の受付で安倍事務所のスタッフが参加者から5000円を集金、受付終了後に集金した現金をそっくりそのままホテル側に渡したと説明し、「安倍晋三後援会としての収入・支出は一切ないから収支報告書への記載は必要ない」と主張してきた。だが、同日の予算委で総務省選挙部長は「記載すべき収支の判断基準は当該団体の収支かどうかということ」「収支の結果ゼロになるかどうかは関係ない」と答弁。ようするに、現金をそっくりそのまま渡してプラスマイナスゼロになったかどうかは関係ない、という見解を示したのだ。
すると安倍首相は、今度は「主催は安倍後援会だが、契約の主体はそれぞれ個人が支払いをおこなっている」「ホテルとの契約主体は参加者個人になる」と言い出したのである。
そんなバカな話があるか。最終的に何人が来るかもわからないパーティを事前の入金もなくホテルが準備するわけがない。しかも、安倍首相は“領収書はホテルニューオータニが宛名は空欄、金額と摘要を手書きしたものをだいたい800人分、事前に発行した”とも主張したが、宛名が空欄なのに参加者をホテルとの契約者とすること自体、無茶苦茶だろう。
この安倍首相の主張がまかり通れば、公選法で禁じられている地元有権者への接待による買収を政治資金収支報告書に記載せず「会場側と参加者の契約だ」と言い張れば、法をすり抜けられてしまうことになる。まさに無法国家ではないか。
実際、昨日の衆院予算委員会では、立憲民主党の辻元清美衆院議員がこの点を指摘。安倍首相にこう迫った。
「この総理の理屈が通用するのなら、日本中すべての自治体議員、国会議員がおこなう後援会の親睦会などはたとえ何千人であっても、総理と同じやり方“安倍方式”で、ホテルの領収書をひとりひとりに渡してやれば収支報告書に不記載でも違法ではない、ということですね? 総理、ここでですね、日本中の自治体議員も国会議員もやってもOKですよと太鼓判を押してください」
だが、安倍首相は従来どおりの答弁を繰り返し、「有権解釈は総務省なので総務大臣からお答えさせたい」と言って高市早苗総務相を答弁に立たせ、高市総務相は「政治団体の収入・支出でない場合は記載の義務はない」と述べた。
そんなわけがないだろう。普通、ホテルでパーティを開こうと思えば、主催者がホテル側と予算を話し合い、見積もりを確認し、場合によっては事前にある程度の入金をおこない、パーティ当日は参加費の集金をおこない、明細書が発行されて過不足分の清算をおこなうものだ。それを安倍首相は後援会が主催だと認めながら「明細書はもらっていない」「参加者がホテルとの契約主体だ」という常識的にあり得ないことを喚いている。つまり、収入・支出があるはずなのに報告書に記載していないという政治資金規正法違反の疑いが濃厚なのに、所管の高市総務相は見て見ぬ振りをするのだ。
「問題ない」という姿勢を押し通す安倍首相と高市総務相。これには辻元議員が「ようするにそれは脱法行為と言うんですよ」と指摘したのだが、対する安倍首相はこう断言したのである。
「まさに領収書をお渡ししているわけでございまして、そういう意味におきましては、(自分と)同じ形式であれば問題ないということであると私は考えております」
自分と同じで問題ない──。つまり、安倍首相は「安倍方式」の「脱法」行為に、堂々とお墨付きを与えてしまったのだ。