嵐が「君が笑えば世界は輝く」と歌った奉祝曲はJ-POP風「君が代」もどきの代物
さらに、あざとさを感じたのは嵐が歌った奉祝曲「Ray of Water」の第3楽章「Journey to Harmony」だろう。脚本家の岡田惠和氏が作詞を担当したものだが、その歌詞は、このようなものだった。
〈君が 笑えば 世界は 輝く
誰かの 幸せが 今を 照らす
僕らの よろこびよ 君に 届け〉
〈はじめはどこかの 岩かげにしたたり 落ちたひとしずくの 水が平野流れ
やがて研ぎ澄まされ 君をうるおし 鳥たちをはぐくみ 花たちとたわむれ
あの大河だって はじめはひとしずく 僕らの幸せも 大河にすればいい〉
〈大丈夫 水は 流れている 大丈夫 海は 光っている
大丈夫 君と 笑ってゆく 大丈夫 君と 歩いてゆこう〉
なんとなくJ-POP風の歌詞にしているが、これ、完全に「君が代」ではないか。「君が代は千代に八千代にさざれ石の巌となりて苔のむすまで」が「君が 笑えば 世界は 輝く」「大丈夫 君と歩いていこう」とゆるくしただけで、君主の永続性を歌っていることには変わりはない。
しかし、こうした有名芸能人の動員とソフト化されたショーアップによって、天皇制の本質や極右勢力の本当の狙いは隠され、「日本の伝統」だの「世界に唯一無二の皇室」だのといったフィクションがどんどん国民に浸透しているのは事実だ。
実際、「国民祭典」を見に訪れたという女子高生はスポーツニッポンの取材に、「人生で初めての経験なので、どうしても来たかった。万歳三唱の時、“日本人で良かった”と感じた」と答えていた。
また、ここまでダイレクトな反応ではなくとも、天皇即位にかんするイベントをテレビがこぞって「お祝い」する効果は絶大で、多くの人が無批判に「おめでたいこと」と口を揃えている。
一方、国民主権や政教分離の問題、イベントに極右が跋扈している事実、新元号選定からつづく安倍首相による政治利用など、この即位に合わせて論じるべき問題はいくつもあるのに、もはや、どこのメディアも、ジャーナリスト・評論家もそんなことを触れようともしない。
この状況を見ていると、安倍首相と日本会議が目論んでいる戦前回帰と全体主義国家化への道はほとんど達成寸前のところまで来ているのではないか。そんな恐怖さえ覚えてしまうのである。
(編集部)
最終更新:2019.11.11 11:17