〈経済的地位によって、教育上差別されない〉と定めた教育基本法をまったく理解していない萩生田文科相の答弁
しかし、ここまで現実的な負担額を目の前に突きつけられても、萩生田文科相は平然とこう答弁したのだ。
「一概にその金額が(経済的に厳しい受験生にとって負担が)可能かどうかということを私が特定することは極めて困難ですけれど、たとえば経済的に困難な方が受験をしたのちに入学すれば、給付型の奨学金でこの費用を補填する仕組みもできあがっている」
この答弁には委員会室がざわつき、城井議員も「大学生活に使うお金を先食いして使えというのは相当無責任な発言」と非難したが、「給付型奨学金制度があるから受験費用は負担しろ」などと言うのは〈経済的地位によって、教育上差別されない〉と定めた教育基本法を萩生田文科相がまったく理解していないことのなによりの証拠だ。
しかも、萩生田文科相は「近くで試験が受けられるようにする」と強調するが、具体策をつっこまれると「試験団体に会場の追加設置を要請している」とまたも民間に丸投げ。一方、 “離島に居住する高校生にかかる交通費や宿泊費は国が2分の1を補助する措置のために概算要求している”とアピールしたが、稚内の受験生のケースの場合はどうかと尋ねられると、「現状では支援メニューをいまのところ用意していない」と補助対象から外れることをあっさり認めたのだ。
大学入学共通テストをめぐってはこのほかにも問題点が山のように指摘されているが、「地域・経済格差を拡大させる」という問題ひとつをとっても、このように何ひとつ解決されていない状態にある。なのに、萩生田文科相は具体的な試算によって多大な負担を強いることになる現実を突きつけられても「受験生が負担が可能かは自分には特定できない」などと知らんぷりして「厳しい環境に負けるな」と精神論を振りかざしているのである。ようするに、いまだに「身の丈に合わせろ」としか言っていないのだ。
文科大臣が経済格差による教育格差を容認し、事実上「地方の貧乏人は身の丈に合わせろ」と言い放つという異常事態は、何ら解消されていない。萩生田文科相は「仮にいまの状況より混乱が進むようなら、(民間試験の実施延期を)考えなくてはならないという気持ちもある」とも答弁したが、すでに混乱しているのだから早急に延期を決定するべきであり、格差を容認する萩生田氏に文科大臣の資格はないとあらためて突きつけておきたい。
(編集部)
最終更新:2019.10.30 11:03