「民主党政権がスーパー堤防を廃止したから氾濫が起きた」のネトウヨ定番デマも
この件については本サイトでも以前、とりあげたことがある(過去記事参照
https://lite-ra.com/2015/09/post-1473.html)。2015年9月の関東・東北豪雨で茨城県鬼怒川の堤防が決壊したことがあったが、このときもネトウヨたちは「民主党が事業仕分けでスーパー堤防を却下したからだ」なる主張をSNSで拡散していた。今回もまったく同じ流れだ。
たしかに、民主党政権が2010年の事業仕分けでスーパー堤防を「廃止」と判定したことは事実だが、そもそもの話、スーパー堤防は完成までに400年以上の長大な年月と10兆円を超える莫大な金額がかかる試算された超巨大事業だ。仮に民主党が仕分けをおこなっていなくても、2019年現在までにスーパー堤防が機能していた可能性はゼロと言っていい。
さらに、ネトウヨたちはあたかも「安倍政権は民主党政権がおざなりにした治水対策を徹底している」というふうに嘯くが、これもデータを見れば事実でないことはすぐにわかる。
たしかに、民主党政権時代に治水関係の予算は減少した。だが、それは民主党政権になる前の自民党政権時代もそうだったのだ。約30年間のスパンで見ると、国交相の河川関係事業費のうち「治水事業等」にかかる年度予算は、1998年の32.5億円をピークに右肩下がりを続け、第一次安倍政権の2007年には15.3億円と半分以下にまで落ち込んでいる。
そして、民主党政権から再び自民党政権に変わったことで治水予算が大きく増えたかというと、そうではない。実際、民主党政権下の最終年2012年に11.2億だったものが第二次安倍政権の2013年では8.9億円と前年比減。その後も、第二次安倍政権下では8億から9億程度で推移しており、これは民主党政権だった2010〜11年とたいして変わらないのである。
もっとも、やみくもに金だけをかければよいというわけではないが、安倍首相の災害対策の意識低さを目の当たりにしてもなお、「民主党から安倍政権になってよかった!」と快哉を叫ぶ連中は、はっきり言って“頭の中がお花畑”だ。
本サイトで連続追及しているように、先の台風15号の際、緊急閣僚会議も開かず、総理指示も出さず、国民から批判を浴びたにもかかわらず、今回の台風19号でも「やってる感」のポーズをとるだけ。実際には、台風が列島を直撃して甚大な被害が出ていた12日には私邸で“のんびり休養”状態で、なおも被害が拡大し救助を待っている人も大勢いた13日夜には“ラグビー日本代表おめでとう”のツイートをして大顰蹙を買った。
しかも、人命救助の分岐点である発災後72時間以内に安倍首相が発したこのツイートは〈台風で大きな被害を受けた被災者の皆さんにとっても元気と勇気を与えてくれる被災者の皆さんにとっても元気と勇気を与えてくれる〉などと、台風被害をすっかり収まった過去のこと扱いするもの。現実には、多くの地域で孤立状態で救助を待っていたり避難生活を強いられていたり、自宅の浸水や停電にみまわれている人々が多くいるにもかかわらず、だ。国の予算をかけた治水事業も検証せねばならないのはもちろんだが、なにより、この国の行政の長である安倍首相の“意識の低さ”こそ、致命的と言わざるを得ない。
ネトウヨや安倍応援団はいま、安倍首相のおざなりな災害対策や意識の低さを無視して、デマでもはや10年も前の民主党政権を攻撃することで悦に入っているが、それがいかに愚かなことか自覚すべきだろう。今回の台風19号のような大規模災害は、またいつやってくるかわからない。本当に、安倍首相にこの国の災害対策を任せていていいのか。批判的に徹底検証しなければ、今回と同じ、いや、もっと甚大な被害を招く可能性は極めて高いのだ。
(編集部)
最終更新:2019.10.16 11:44