参議院インターネット審議中継より
消費税率が10%に引き上げられて約1週間が経ったが、その一方で悲惨な数字が立てつづけに発表されていることをご存知だろうか。
まず、7日に内閣府が発表した8月の景気動向指数(速報値)では、現状を示す一致指数が前月より0.4ポイント低い99.3となり、基調判断は景気後退の可能性が高いことを示す「悪化」に引き下げた。「悪化」は5段階ある判断のうちもっとも悪いもので、今年3月分で6年2カ月ぶりに「悪化」となり、4月分でも「悪化」、5〜7月分では「下げ止まり」だったが、再び「悪化」に戻ったのだ。
さらに、増税当日の1日に日本銀行が発表した9月の全国企業短期経済観測調査(短観)では、大企業・製造業の業況判断指数がプラス5で前回6月調査から2ポイント悪化。悪化は3四半期連続となっており、2013年6月調査(プラス4)以来の低水準だ。
また、2日に内閣府が公表した9月の消費動向調査では、今後の財布のひもの緩み具合を示す消費者態度指数が前月比1.5ポイント低下で35.6に。前月を下回るのは12カ月連続であり、今回のこの数字は、調査方法が変更された2013年以降では過去最低の水準のものだ。
これだけではない。8日に厚労省が発表した8月の毎月勤労統計調査(速報)によると、実質賃金は前年同月比で0.6%減となり、じつに8カ月連続のマイナスを記録した。つまり、今年に入ってずっとマイナスがつづいているのだ。
景気は「悪化」し、実質賃金も上がらない──いま必要な財政政策は減税であることは間違いないが、こうした状況を一切省みることなく、安倍政権は増税を実行してしまった。はっきり言って正気の沙汰ではない。
本サイトでは何度も繰り返し訴えてきたように、逆進性の高い消費税よりも、まずは消費増税とは反対に税率が下げられてきた法人税や、安倍政権が増税を見送った株式の配当や売却益といった金融所得への課税を見直すべきだ。
実際、8日に衆院本会議でおこなわれた代表質問では、共産党の志位和夫委員長がこの問題を追及。そもそも政府は「財政再建のため」「社会保障のため」と言っては消費税の税率を引き上げてきたが、この31年間で、国と地方の借金は246兆円から1069兆円と約4倍以上になっており、社会保障のほうも年金は減り、サラリーマンの医療費窓口負担も3倍になっているように「財政再建、社会保障のため」という政府の言い分は「どちらも嘘」だと喝破。こうつづけた。
「この31年間の消費税収は397兆円ですが、同時期に法人3税の税収は298兆円減り、所得税・住民税の税収も275兆円減りました。大企業と富裕層への減税が繰り返されたのに加えて、消費税増税がもたらした経済の低迷が税収を減らした結果です。結局、弱者から吸い上げ、大企業と富裕層を潤す。これこそが消費税の正体であることは、31年間の現実ですっかり明らかではありませんか」
大企業と富裕層に優遇する一方で、消費増税によってその分を穴埋めしてきた──。この追及に対し、しかし安倍首相は、淡々と原稿をこう読み上げた。
「所得税や法人税による税収の減少の背景としては、制度改正要因にくわえ、バブル期以降の資産価格の下落等、経済情勢の要因もあることに留意が必要です。この間、急速な高齢化等を背景として年金・医療・介護等の社会保障給付費は大きく増加してきました。消費税は税収が景気や人口構成の変化に左右されにくく安定しており、勤労世代など特定の者への負担が集中しないことから社会保障にかかる費用を賄うための財源としてふさわしく、引き上げによる増収分は実際に社会保障の財源として活用されてきました」