国際社会の批判を無視し、安倍政権の歴史修正主義と同化する日本マスコミ
さらに同紙は、1965年の日韓基本条約にも触れ、〈しかし、この条約はまた、日本を過去の残虐行為の清算から逃れさせた〉として、交渉において日本政府と韓国軍事政権が戦争被害者の視点を考慮しなかったと指摘。その後、80年代から90年代にかけての韓国民主化の流れのなかで、それまで沈黙を強いられていた元「慰安婦」が声を上げたと解説し、〈条約は彼女たちの不満を扱うのに十分でないことを証明した〉と述べる。そして、過去の戦争犯罪を忘却させようとする日本社会と政治の歴史修正主義的な性格を指摘し、日韓の貿易問題に限らず、こうした状況が世界に及ぼす悪影響を示唆して記事を締めくくっている。
〈日本はまた口先だけの努力で(両国の)論争を煽り続けている。90年代以降、日本の政治的リーダーらは、日本の過去の悪行のお詫びと反省を表明するいくつもの談話や声明を出してきた。しかしながら彼らの釈明、あるいはその誠実さに疑問符を付けさせる悪名高い靖国神社参拝などの行為で、談話や声明を一貫して弱めてきた。
日本社会は、第二次世界大戦で日本軍がしたことを認め、反省を示すことを失敗してきた。ドイツとは違い、日本は第二次世界大戦での残虐行為を人々に教育し思い起こさせる記念碑や記念館を建ててこなかった。現在の総理大臣である安倍晋三は、歴代の首相よりも歴史問題で強固な姿勢をとっており、それまで以上の謝罪をおこなわないことを明確にしている。学校教育では20世紀初めの日本は純粋に利権を追求したにすぎないと教えられ、日本の若者もまた自分たちの国が過去におこなったことについて謝罪する必要はほとんどないと思っている。こうした傾向はすべて、ナショナリストのパブリックメモリーとしてより強化し、現在の貿易問題を悪化させる恐れがある。
貿易戦争が地域経済と世界経済に波及する前に日本と韓国が何かしらの合意に達する可能性はあるが、現在の問題が解決したとしても、日本が、近隣諸国との和解を達成するために、さらに広く一貫した努力をしないかぎりは、アジアは常に、別の経済的あるいは軍事的な危機に近い状況に不安定なかたちで置かれるだろう。難しい歴史の考慮を怠ったことが未来の繁栄に限界をもたらし、そして世界の他の地域が苦しむ結果になるかもしれない。〉
日本政府がアジア侵略や戦争犯罪を反省し、被害を受けた市民一人一人に対して謝罪や真摯な対応をしなかったことが、現在の日韓関係の悪化を招き、さらには世界経済を混乱させかねない。そう追及するワシントン・ポストの論調は、国際的に考えて至極当然のものだろう。
しかし、韓国国民が反日ではなく、安倍政権の戦前回帰、大日本帝国肯定に危機感を持っていることも、そして、欧米をはじめとする国際社会がワシントン・ポストと同様に、「安倍政権が過去の罪の償いに向き合わないこと」が韓国との対立の最大の原因だと捉えていることも、いまの日本のメディアはほとんど報道しようとしない。
それどころか、テレビのワイドショーなどはまったく逆に、安倍政権の歴史修正主義、戦争犯罪否定をデフォルト化させ、植民地時代の差別的視線そのままに、洪水のような韓国ヘイト報道を展開しているのだ。
17日、ジョージメイソン大学大学院博士課程の社会学研究者・古谷有希子氏が、「Yahoo!個人」に「日韓関係の悪化は長期的には日本の敗北で終わる」と題した論考を発表。そのなかで、日本政府に対して〈たとえ貿易戦争で一時的に国民をスカッとさせるような結果を得ても、歴史修正主義に立った「歴史戦」は日本の外から見れば明らかに日本の劣勢であり、長期的に見れば勝ち目のない戦いである〉と警鐘を鳴らした。
ネトウヨはこの論考に早速「反日」「韓国の回し者」と攻撃を加えているが、この分析は国際社会の動きを見ると、決して間違っていない。安倍政権の煽りに乗っかって、日本がのっぴきならない状況に追い込まれたら、間違いなく、その共犯者はマスコミである。
(編集部)
最終更新:2019.08.18 06:04