財務省・中村官房参事官が菅官房長官らと行っていた文書隠蔽の相談
官邸との関係は容易ではないが調整したい──。つまり、財務省の国会答弁は官邸と緻密に調整した上で作成されていた、というわけだ。「価格交渉をしたのかどうかが追及のポイント」とまで述べているのだから、当然、交渉記録の破棄を官邸が知らなかったなどということは、この口ぶりからはまずもって考えられないだろう。
そして、極めつきはこの発言だ。
「検査院に対しては官邸だからといって通用しない。説明していくタイミングも考える必要がある。両局長が官邸をまわっている姿をマスコミに見られるのはよくない。まずは寺岡を通じて官房長官への対応するのが基本。与党へもいずれは何らかの対応が必要だろう。相手は検査院なのでこのような報告が出てしまうのはしかたがないとの認識を持たせていくことが必要」
「寺岡」というのは寺岡光博・官房長官秘書官のことを指していると思われるが、じつは寺岡氏は前述した2月22日の菅官房長官が中村氏らを呼び付けた官邸での面談にも同席していたことがわかっている。つまり、これは官邸、菅官房長官ぐるみで、会計検査院の報告や国会対応をどうごまかすか、文書隠蔽の相談を図っていたことを裏付ける発言なのだ。
このように、中村氏は森友文書改ざんに大きくかかわっただけでなく、その後も官邸の意向に沿って国会や会計検査院の対応にたずさわった。ようするに、官邸関与の実態を知る人物のひとりなのである。
官邸は、太田氏を事務次官が約束されたも同然の主計局長に昇進させ、改ざん当時に官房長を務め文書厳重注意を受けた岡本薫明主計局長も事務次官に抜擢している。そして、今回の中村氏のイギリス公使栄転──。これによって、官邸は森友問題を闇に葬り去ったつもりなのだろう。現に、中村氏や佐川氏らが再び不起訴処分になった件も、この人事の件も、メディアの扱いは小さいもので、あらためて検証をおこなう気運もみられない。
前代未聞の国家による公文書改ざんという大事件に対し、政権が責任を負うこともなく幕引きがなされてしまう。この事実の重大さに多くの国民が声をあげない現状は、もはや安倍政権がなんでも好き勝手にできる体制ができあがったということなのだろう。
(編集部)
最終更新:2019.08.17 11:42