「夫婦別姓は左翼、共産主義のドグマ」と主張していた安倍首相
だが、安倍首相からこんな発言が飛び出すのは、ある意味、当然だろう。安倍政権は「女性が輝く社会」と言いながら、財務省のセクハラ問題で麻生太郎財務相が「セクハラ罪っていう罪はない」だのと言ったり、下村博文元文科相が「テレビ局の人が週刊誌に売ること自体がハメられている。ある意味で犯罪だと思う」と言い出して麻生財務相もそれに丸乗りしたりと、女性の権利・人権を踏みにじる暴言がこれまで何度となく飛び出してきた。今年4月、「復興以上に大事なのは議員」と発言して五輪担当大臣を辞任した自民党の桜田義孝議員が、5月末に「お子さん、お孫さんには子どもを最低3人くらい産むようにお願いしてもらいたい」と発言して問題になったことも記憶に新しい。
しかも、夫婦別姓にかんして言えば、安倍首相こそが反対の先頭に立ち、“夫婦別姓が国を滅ぼす”と言わんばかりに吠えてきた当事者だ。
「夫婦別姓は家族の解体を意味します。家族の解体が最終目標であって、家族から解放されなければ人間として自由になれないという、左翼的かつ共産主義のドグマ(教義)。これは日教組が教育現場で実行していることです」(「WiLL」ワック2010年7月号)
「自民党の中でも健全な保守的な考えを持つ議員がヘゲモニー(覇権)を握り、主流派になっていくことが求められています。その際は外国人参政権、夫婦別姓、人権擁護法案などの問題に対して、明確な態度を示しているかどうかが一つの基準になります」(「WiLL」2010年8月号)
国連が勧告を出しつづけているように、夫婦別姓を認めないことは女性差別だ。だが、そうした差別の問題を「共産主義のドグマだ」として攻撃し、夫婦別姓に反対する“健全な保守議員”が主導権を握らなければいけないと主張して、極右層からの支持を得てきたのが安倍晋三なのだ。
いまはそうした本音を開陳できない立場であるため、「経済成長とは関わりがない」などと述べて逃げたつもりなのだろうが、ようするに、安倍首相はハナから女性の人権問題に関心がないばかりか“人権を認めない”という立場で人気を取り付け、いまも女性をたんなる“労働力”、あるいは出生率を伸ばすための“産む機械”としかみていない。だからこそ、女性の雇用環境改善や家事・育児の男性参加という課題に積極的には取り組もうとしないのだ。