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百田尚樹が朝日新聞に「『日本国紀』の近現代史は批判されてない」 ならば百田が書いた近現代史の嘘と陰謀論を徹底批判!

『日本国紀』「マッカーサー神社」の記述はデマだ

 ちなみに、百田はWGIPに関する『日本国紀』430〜433ページのコラムのなかで〈戦後、GHQに最も忠実な報道機関となった一つが朝日新聞である。同紙は積極的にGHQの政策を肯定し、マッカーサーを賞賛した〉などとして、こんなことを書いている。

〈呆れたことに、この時、マッカーサーをご神体に据えた「マッカーサー神社」を作ろうという提案がなされ、その発起人に当時の朝日新聞社社長の長谷部忠が名を連ねている(毎日新聞社社長、本田親男の名前もある)、朝日新聞にとって、マッカーサーは現人神だったのであろう。〉

 嘘である。ネット上の一部では「マッカーサー神社」なるものがさも実在したかのように言われているが、そんなもの今も昔も存在しない。1951年にマッカーサーが解任された後、東京に「マッカーサー元帥記念館」を建設しようとの計画が持ち上がり、それが「マッカーサー神社」と俗称されただけだ。

 なお、この「マッカーサー会館建設期成会」が打ち出した建設計画は、東京・三宅坂の旧参謀本部跡に三階建てのビルを建てるというものだったというが、募金が集められるも食い物にされたあげく、借金をかかえて頓挫したようだ(袖井林二次郎、福嶋鑄郎・著『図説 マッカーサー』)。いずれにせよ、マッカーサーを「ご神体」とする神社を建立しようとしたわけではない。

 どうだろう。百田が「批判はそんなにありません」と豪語する近現代史のほんの一部を検証してみただけで、『日本国紀』には“コピペ問題”と同等かそれ以上に、中身に問題があることがおわかりいただけたのではないか。

 『日本国紀』は〈私は、日本人は世界のどの国の国民にも劣らない優秀な国民だと思っている〉などとして日本を賛美しながら、〈「大東亜戦争は東南アジア諸国への侵略戦争だった」と言う人がいるが、これは誤りである〉などと侵略戦争および戦争犯罪を否認し、WGIP陰謀論を駆使して「戦後日本」の平和国家としての歩みを「自虐史観」の名の下に否定する。そして、この「戦後日本」を終わらせるために〈日本にとって憲法改正と防衛力の増強は急務である〉と断言し、安倍首相による憲法改正を後押しする。だからこそ、安倍首相が写真をアップしてPRまでするのだ。

 その意味で言えば、『日本国紀』は思っているよりもずっと深く、わたしたち自身とこの国の将来にかかわってくるのかもしれない。幻冬舎が作家の実売部数晒しを謝罪したことをもって、幕引きにしてはならないのである。
(編集部)

■ 参考にした主な文献
・学術研究
賀茂道子『ウォー・ギルト・プログラム GHQ情報教育政策の実像』(法政大学出版)
三井愛子「新聞連載「太平洋戦争史」の比較調査」後編(同志社大学「評論・社会科学」2012年6月所収)。
太田奈名子「占領期ラジオ番組『質問箱』の内容分析」(メディア史研究会・編「メディア史研究」2018年11月所収)。

・一般書
高橋史朗『WGIP(ウォー・ギルト・インフォメーション・プログラム)と「歴史戦」』(モラロジー研究所)
高橋史朗『「日本を解体する」戦争プロパガンダの現在 WGIP(ウォー・ギルト・インフォメーション・プログラム)の源流を探る』(宝島社)
西尾幹二『GHQ焚書図書開封』(徳間書店)
半藤一利『マッカーサーと日本占領』(PHP研究所)。なお、半藤は「マッカーサー元帥記念館」を〈仮称「マッカーサー神社」〉と注釈しているが、計画団体の名称にも「神社」とはないのでやはり俗称と考えるべきだろう。
袖井林二次郎、福島鑄郎・著『図説 マッカーサー』(河出書房新社)

最終更新:2019.05.27 12:44

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