テレビ朝日ホームページより
第二次安倍政権発足以降、相次ぐ言論弾圧や懐柔によってすっかり自粛と忖度体質を身につけてしまったテレビ報道だが、その一方で、ドラマでは、安倍政権を風刺し、日本が直面する現実や事件をモチーフに描いた作品が増えている。
たとえば2018年正月に“官邸のアイヒマン”北村滋内閣情報官をモデルにしたような人物を登場させ、その翌年にも安倍政権の暗部を彷彿とさせる内容のドラマを放映した『相棒』(テレビ朝日)、やはり御用ジャーナリスト・山口敬之の性暴力隠蔽を想起するような内容を描いた『アンナチュラル』(TBS)、2019年には『グッドワイフ』(TBS)が検察と政権の癒着や違法捜査を描いて大きな話題になった。
そして、つい最近、やはり安倍政権下で巻き起こっている様々な不祥事、スキャンダルを想起させるドラマが放送された。5月3日に放送された『家政夫のミタゾノ』(テレビ朝日)シーズン3の第3話だ。
このドラマはTOKIOの松岡昌宏演じる家政婦の三田園薫が、派遣先の家庭を覗き見してその様々な問題や内情を暴き、さらに問題を解決して家族を再生へと導くというコメディタッチの人気シリーズ。今回、放送された3話で三田園が派遣された先は、次期総理の座が確実視されている内閣官房長官・内部忠(小堺一機)の家庭であり、大きなテーマとなっていたのがズバリ“総理への忖度”だった。
三田園が派遣される直前、「クリーンすぎる内閣」として高い支持率を維持してきた矢那公平内閣が新設した「総理大臣医薬化学賞」の授賞式が行われた。この賞を受賞したのは、若返りの新薬を発明した落合康介教授(大堀こういち)。しかし、その研究データが、改ざんされたという疑惑が浮上する。もしこれが明らかになれば、政権へのダメージは必死だ。しかも内部は矢那総理から「あとは色々頼んだよ」と曖昧にだが総理禅譲を約束されてもいた。そのため内部はデータ改ざんを闇に葬ろうとさまざまな画策を試みるのだ。
まず、データに偽装があったかどうかを秘書に確認する内部だが、そこではこんな会話がなされている。
内部「こっちでも論文のデータをチェックしたんだろ?」
秘書「はい、そのはずです」
内部「そのはずって」
秘書「実は審査部でチェックした人間を探したのですが、誰もが下の者にチェックするように言いましたと。下の者をたどっていったんですが」
内部「チェックした人間が見当たらないのか」
秘書「はい」
安倍政権下で起こったさまざまな改ざん事件でも、責任ある幹部、政府関係者は誰一人として責任を取っていないが、内部ではこんな会話がかわされていたのではないかと思わせるようなシーンだが、これはまだ序の口だ。
ドラマでは、政府・官庁だけでなく新薬の当事者である落合教授が、データを改ざんしたのは部下である准教授にあると嘘の言い訳をするのだが、それを聞いた内部は早速、矢那総理に電話でこう報告する。
「そうか。大丈夫なのか?」
「もちろん。万が一にもあの、総理に火の粉が降りかかることはありませんので、ご安心ください」
「いろいろと、頼むよ」
しかし、データ改ざんが週刊誌「週刊文鳥」によってすっぱ抜かれる事態となったことで、データ改ざんはあくまで准教授の責任だが、落合教授にも監督責任があることを事前に公表し、事態を収束させようとする内部。そしてその“戦略”を矢那総理に報告するのだが、矢那総理からは意外な言葉が返ってきたのだ。
「はい、記事が出る前に手を打ちます。ここは落合教授の監督責任ということで処理をしようかと」
「それはどうだろうな」
「はい?」
「あいつは私の古い友人なんだよ」
驚いて顔色が変わる内部。そして声をひっくり返してこう叫んだ。
「ええっ!! お友だちなんですか? それは初耳です!」