政権広報紙・読売が明かした安倍首相とトランプの選挙目的“裏交渉”
実際、トランプ大統領の「農産物の関税撤廃を5月までにサインする」という発言に、〈首相は首をかしげ、顔を一瞬しかめた〉というが(朝日新聞4月28日付)、読売新聞(4月28日付)によると、そのあと、記者団が退室すると、安倍首相はトランプ大統領に「7月の参院選があるから、それまでは無理だ。20年秋の大統領選のことはきちんと考えている」と説明したという。
政権広報紙の読売なので、その発言を批判するようなトーンはまったくないが、これは、安倍首相が参院選が終わるまで待ってくれれば、こっちも大統領選に配慮して関税の大幅引き下げに応じると、トランプに約束したということではないか。
しかも、関税の大幅引き下げを約束しただけでなく、前述したように、安倍首相はこのあと、用意してきた約4兆4600億円の投資や武器の大量購入などの“手土産”まで持ち出しているのだ。
実際、前出の読売記事では、「7月の参院選があるから、それまでは無理」と安倍首相が言ったあと、〈州ごとに自動車分野などの投資案件を示した資料を見せた〉という。この資料は〈大統領選を念頭に、どの州に投資が集まるのか、カラーで一目でわかるようにした〉もので、トランプ大統領はそれに見入ったらしい。
参院選に影響を与えないよう、関税引き下げ交渉をかたちだけ延期し、その一時しのぎのために自動車工場への投資や大量の武器購入を約束する。そして、7月の参院選が終われば、トランプ大統領の言うがままに農産物の関税を引き下げる──。これでは、安倍首相は自分たちの選挙のために日本の国益をトランプに差し出したようなものだろう。
まさに国民を舐めきっているとしか思えないが、しかし、もっと暗澹とさせられるのは、この首脳会談の中身を批判しようとないメディアの姿勢だ。日米首脳会談のあと、新聞やテレビはこの問題をほとんど追及することなく、代わりに、安倍首相の「次は私自身が、金正恩朝鮮労働党委員長と向き合い、(拉致問題を)解決する。トランプ大統領からは全面的に協力するという力強い言葉があった」という拉致問題に関する勇ましい発言や、韓国の禁輸措置を容認した世界貿易機関(WTO)への日本の抗議を“アメリカが日本を支持した”などといった話ばかりを強調している。安倍首相が約束したという「400億ドル投資」や「武器購入」などの朝貢外交に対する批判にいたっては、まったくないに等しい。
たんなるトランプの犬でしかない安倍首相の外交の問題点を、政権の言いなりであるメディアが伝えない。そして、国民は自分たちがおさめた税金が選挙対策としての武器購入費に投入され、選挙後に日本の農業界に大打撃を与える関税の大幅引き下げがおこなわれようとしている可能性が高いことを知らされないまま、「外交の安倍」という虚構だけがイメージづけられてゆく。まったくこの国の状況は、絶望的というしかない。
(編集部)
最終更新:2019.04.29 11:04