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中村文則がジブリの雑誌で語った安倍政権批判に踏み込む理由「言うべきことを言わないのは読者への裏切り」

中村文則が分析する歪な「ナショナリズム」と「ヘイト」が台頭する構造

「言っても変わらないことを言いつづけるって、実はものすごいストレスなんです。言わない方がはるかに楽で」と中村氏は言う。そうしたなかで「半径5メートルの幸福」に浸る人がいる一方、「誰もが自分の仕事に夢や希望を抱けるような社会ではない」現状のなかで喪失した自信を取り戻すために、手っ取り早い「ナショナリズム」が台頭している──。中村氏はそう指摘するのだ。

「日本人は優秀だ、先の大戦は間違いじゃなかった、オレたちはなぜ謝罪ばかりしなくちゃならないんだと。そういう面で自信を抱くことで気持ちもちょっと強くなる、安定するという人間の感情を煽る連中も増えてきたからだと思います」

 テレビをつければ「韓国は反日」と連呼され、書店にはヘイト本がずらりと並ぶ昨今。最近では厚労省のキャリア官僚が韓国の空港で「韓国人は嫌いだ!」と叫んだり、日本年金機構の世田谷事務所長がSNSでヘイト発言を振りまいていたことが判明するなど、完全にタガが外れた状態にある。こうした現状についても、中村氏は「ある意味で差別は一種のタブーですが、そういったことをあえて口に出すというか、「オレ、言ってやった」とか「言っちゃいけないことを言ってやった」という係がいて、「あ、あの人、言っちゃったよ」と楽しむような、気持ち悪い快楽を楽しんだりする人もどんどん増えている。すると、それを煽って商売する人も増えるという悪循環に陥っているのが、とくにこの数年の状況」と言及し、「第二次安倍政権からというと語弊があるかもしれませんが、ちょうどそのころから一層顕著になったのは間違いない」と述べている。

 社会に対する不安を、つくり上げた「敵」への攻撃心に向けさせナショナリズムを煽る。しかし、それがなぜ広く受け入れられてしまうのか。中村氏は、その構造をこんなふうに分析している。

「いつの間にこうなっちゃったのかなとも考えるのですが、現実に多くの人は自分を恵まれていないとは思っていないでしょう。むしろ恵まれた側にいると思いつづけたい。いまは給料が低いけど、アベノミクスの成果だかなんだか知らないけれど、いつか上がっていくと思っている。年金がもらえないかもしれないっていうのも、本来は「そんなバカな!」と怒るべきなのに、怒るのがちょっと格好悪い気がするから、自分の責任でやるしかないと考える。そんなのは自己責任だしねという自分、そんなふうに言えるオレって自立しててカッコいい、という……。で、実際に老人になったとき、本当にお金がなかったらどうするのかということは考えたくない。まさに正常性バイアスです。原発だって大丈夫だと思いたいし、考えるのが嫌なので、地震もないし爆発もしない。そう考える方が楽だから見ない。そういうことでしょう」

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