総務省統計局が公表した「修正エンゲル係数」のトンデモな中身
まず、同レポートでは、2015、16年にエンゲル係数の上昇幅が大きくなったことについて、〈この2年間でエンゲル係数は1.8ポイント上昇〉と認めながらも〈1.8ポイントの上昇のうち半分の0.9ポイント(総務省統計局試算)は物価変動の影響によるもの〉と主張したかと思えば、〈近年、急速に存在感が増しているのが、デパ地下やスーパー、コンビニで売られる惣菜や弁当、冷凍食品などの「調理食品」で、最近の食料支出の牽引役ともなっています〉などと強調している。
つまり総務省は、安倍首相と同様の主張を繰り広げていたのである。
だが、驚くのはこのあと。総務省のレポートは、〈世帯が得た所得は、商品・サービスの消費に支出されるだけでなく、住宅の取得や将来に備えた貯蓄など、消費以外の金融資産・不動産資産の形成等にも支出されます。所得から支払われるこれらの支出も、消費と同じく世帯の生活を支え、国民生活の豊かさとも関係しますが、消費支出ではないため、エンゲル係数の分母には加味されません〉などと、ダラダラと解説を加えたあと、いきなりこう宣言するのだ。
〈物価変動の影響を除去した実質食料支出の実質可処分所得に占める割合を「修正エンゲル係数」とし〉その上で、この修正エンゲル係数の推移を本来のエンゲル係数の推移に重ね合わせた以下のようなグラフを掲載している(以下、同レポートより転載)。
総務省統計局HP「統計Today No.129」より「図9 エンゲル係数と修正エンゲル係数(1980年~2017年) (二人以上の世帯のうち勤労者世帯)」
ようするに、修正エンゲル係数で計算したら、2015〜2017年の数値は本来のエンゲル係数より著しく低くなると言いたいらしい。
しかし、それは当たり前の話だろう。本来のエンゲル係数は前述のように、「消費支出総額」を分母としており、消費したお金のうち食料費が占める割合のことだが、この「修正エンゲル係数」が分母にしている「可処分所得額」は手取り収入全体。貯蓄や金融資産、住宅ローンに回す分の収入も含まれている。分母が大きくなるのだから、数値が低くなるのは当たり前ではないか。
総務省は、持ち家のローンが分母にカウントされないからエンゲル係数は実態を反映していないというが、同じ方式でずっとやっているなかで数値が上昇しているのだから、何の言い訳にもならない。しかも、持ち家の場合に個別に補正をかけるならまだしも、分母を消費支出から可処分所得に変えてしまったら、もはやそれはエンゲル係数でもなんでもない。