統一地方選唯一の与野党激突の構図となった「北海道知事選(4月7日投開票)」で、自公推薦の鈴木直道・夕張市長と野党統一候補の石川知裕・元衆院議員が対照的な選挙戦を展開している。
苫小牧市内のホテルで2月11日、知事選向けの公明党時局講演会が開かれ、鈴木市長が講演を終えると、約800人(主催者発表)の聴衆から大きな拍手が沸き起こった。そして会場出口近くで握手タイムが始まると、興奮冷めやらぬ参加者が「感動しました」「応援します」と鈴木市長に声をかけていく。
「夕張ではジャニーズ並の人気」(地元市議)を道内全体に広げようとする現場に立ち会うことになったのだが、「高橋はるみ知事以上の“官邸言いなり知事”になるだろう」(道政ウォッチャー)と懸念される鈴木市長への疑問は膨らむばかりだった。約30分間の講演の大半が、逆境を乗越えた波乱万丈の人生遍歴――離婚で大学進学を諦めた高卒都職員が働きながら法政大学卒場後に夕張派遣をきっかけに30歳で全国最年少市長となり、今度は北海道知事選出馬を決意――を辿っていく“鈴木市長物語”で、道政全般の政策や課題について語ったのは最後の4分間だけだった。
「道内カジノ有力候補地の苫小牧で、なぜカジノ誘致に対する考えを語らないのか」「知事選の争点である泊原発再稼働やJR廃線問題について一言も触れないのか」という違和感を抱かざるを得なかった。
そこで握手タイムを終えた鈴木市長を直撃、「原発とかカジノとかJR廃線問題とかの政策に触れられなかったのは理由があるのですか」と訊くと、「理由は特段ないが、政策の議論はこれからしっかりやっていきますので」という答えが返ってきた。
そんな国策追随型でもある鈴木市長とは対照的なのが石川氏だ。6日後の2月17日、同じ苫小牧市で開かれた共産党主催の演説会で、「中央依存型の道政から道民に向き合った北海道を目指す。カジノ誘致より子どもの未来のための施設をつくる」と訴えたのだ。石川氏は「IRの経済効果は疑問」「推進の立場ではない」と安倍政権に追随しない立場を強調、別の道を目指す姿勢も明らかにした。「北海道は観光資源も豊かですし、観光を中心とした経済成長、一次産業、農林水産業を中心とした六次産業化で経済を押し上げていくのが適当だと思う」と語っていた。
前記事で登場した道政ウォッチャーは「鈴木市長は自公推薦候補というよりも公明党公認候補であるかのようだ」と話していたが、注目すべきは、自民党の推薦決定が2月9日で、1日の出馬会見当日に推薦を即断即決した公明党より8日も遅れたことと、自公推薦候補となる3日前に鈴木市長参加の公明党時局講演会開催が発表されたことだ。
「道連選考途中の2月1日に鈴木市長が“フライング出馬会見”に踏み切った当日に公明党は推薦決定をした。“公明党カード”が素早く切られたことで、自民党道連内の和泉晶裕・国交省北海道局長擁立派を抑え込み、官邸の意向に沿った鈴木市長で決着したのです。しかし和泉氏不出表明後も第二の候補として橋本聖子参院議員擁立を目指す動きが出る道連の大混乱で、8日間も自民党推薦が遅れた。もし保守分裂となっていたら『自民党推薦は橋本氏、公明党推薦は鈴木氏』という前代未聞の捩れ選となっていたが、そんなリスクのある即断即決の推薦決定を公明党北海道本部だけで出来るはずがない。中央の公明党本部と事前に調整済であったはずで、道連の候補者決定権をはく奪するような荒業ができるのは、菅(偉義)官房長官と佐藤(浩)副会長コンビ以外には考えられない」(道政ウォッチャー)